次世代の波が押し寄せる卓球界 東京五輪へ、躍進目覚ましい中高生

平野貴也

「みうみま」の刺激で成長した早田

平野美宇、伊藤美誠と同世代の早田ひなも東京での活躍が期待される選手の一人だ 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 女子は、2人の女子高生が活躍した。

 1人は、一般の部で8強入りを果たした15歳の早田ひな(希望が丘高)だ。日本代表選手の早期敗退が目立った今大会では、日本人選手の最高成績となった。世界ランク2位の丁寧(中国)には歯が立たなかったが、予選を勝ち上がり、本戦1回戦で世界ランク14位の徐孝元(韓国)を破るなど、ポテンシャルの高さを証明した。

 左利きで強力ドライブと一撃で射抜く強打が武器。まだ体の線が細く、武器を生かすまでの展開力や、打った後のリカバーの動きなどに改善の余地を残すが、女子では珍しく積極的に仕掛けられる選手だ。

 指導する石田大輔コーチは「ひなたちの世代は、打倒中国が目標。中国に勝てる日本をそろそろ育てていきたいというのが、今の日本の育成事情。強化の環境が整い、選手が本気でできると思えるようになってきている。ひなは、大きな展開になれば世界トップで通用する武器がある。中国を倒すためには、そこまでの小、中の組み合わせ、精度の向上、体つくりが課題。体力が足りずに負けている試合もあるので、食事も改善しているところ」と現時点の課題を挙げつつ、将来に期待を寄せた。

 早田の成長の影には、同世代の刺激もある。2000年生まれで日本代表の伊藤美誠(スターツ)や、伊藤との「みうみま」ペアでの活躍が知られる平野美宇(JOCエリートアカデミー)と同い年。伊藤と平野は、ダブルスで一昨年のドイツオープンを優勝し、史上最年少13歳でワールドツアー優勝を果たしている。そのため、早田は「(成績が良くても)全然満足できない。自分より上がいるから、まだダメだと気持ちを入れ替えられる。2人は大きな存在」とライバルに目標意識を引き上げられている。

悔しさ残した浜本

今春に行われた世界選手権にも出場した17歳の浜本 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 もう1人、存在感を示したのは、今年の世界選手権で日本代表入りした17歳の浜本由惟(JOCエリートアカデミー)だ。

 一般の部は、予選3回戦で韓国のレジェンド、金キョン娥の老獪(ろうかい)な戦いに敗れて本戦出場を逃したが、U21部門では準決勝で早田を破って決勝に進出。準優勝を飾った。

 しかし、浜本にとっては出場3大会連続のU21準優勝。ジャパンオープン初優勝が目標だっただけに、大会を通じた収穫を問われても「ありません」と一言。試合後の表情は悔しさでいっぱいだった。

 元バレーボール選手の父と、中国人の母を両親に持つ浜本は、過去にモデルとして活躍したこともある長身選手。身長174センチと恵まれた体格が目を引く。打ち合いの中でもカバーできる範囲が広い。現在は、得意のバックハンドを改良中。指導する劉潔コーチは「上手だけど、腕に力が入って守るだけになってしまう。もっと体全体の力を使えば、もっと速いボールでレシーブできる」と狙いを明かした。守勢からカウンターで逆襲に持ち込むことができれば、世界のトップとの距離を縮められる。

東京五輪での飛躍が期待

 これからリオ五輪の開幕を迎えようという時期に気の早い話だが、日本は世界のトップとの差をぐんぐんと縮めているだけに、2020年東京五輪では大きな飛躍が期待される。男子は、12歳にして世界のトップとの対戦を経験している張本が戦力として成長すれば、メダル獲得のチャンスが広がる。

 一方、女子は、そもそも現在の代表選手がまだ若い。4年後には福原が30歳を超えるが、石川は27歳、伊藤は19歳。伊藤は現世界女王の丁寧を4月に破り、今回の対戦でも1ゲームを奪って「どっこい、どっこいになって来たかな」と手応えを語った。そこに早田や浜本が加わる競争で、中国に追いつくレベルアップができるか今後が楽しみだ。

 まずは、あと1カ月半ほどで開幕するリオ五輪に注目だが、日本卓球界には、次が控えていると言わんばかりに4年後の東京を見据える次世代の波が押し寄せている。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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