ソフトバンク、快挙の理由は「乗艇位置」 アメリカズカップで初の表彰台
好成績のカギは乗艇位置の変更
乗組員の乗艇位置を変更し、歯車がかみ合いだしたソフトバンク・チーム・ジャパン 【写真:ロイター/アフロ】
こういった難しい状況でソフトバンク・チーム・ジャパンが好成績を収めた要因のひとつが、乗組員の乗艇位置を変更したことにある。風向やレース海面をチェックしコースプランを考えるのは“タクティシャン”を務めるクリス・ドレーパーの役割だが、ドレーパーはこれまで、艇の最後方で舵を持つ艇長ディーン・バーカーの隣、後方から2番目の位置に乗艇していた。
この乗艇位置を風上に向かうときのみ、前から2番目の位置に変更。艇長と位置が離れてしまうことで密なコミュニケーションは難しくなるが、そのぶん前方にいることで海面や風が見渡しやすくなり、風のシフトや強さなどがよりつかみやすくなる。
バーカー艇長も「バミューダで練習を重ねてきた結果、艇上のコミュニケーションがとてもスムーズになった」と語っており、タクティシャンと艇長が常時隣りに座っていなくてもしっかりとしたコンビネーションがとれるほど、チームがかみ合ってきた結果の乗艇位置変更といえる。
このように歯車が回り始めると運も向いてくるのか、翌日の11日は風が吹かない予報のため、3つ目の練習レースが予備レース扱いとなった。この予備レースは11日にレースができなければ本番レースとしてカウントされる。
翌11日は予報どおり、レース実施の要件を満たすだけの風が吹かずキャンセルに。10日の予備レースが本レース扱いとなり、ソフトバンク・チーム・ジャパンとして公式レース初の1位フィニッシュを獲得した。
初の表彰台がチームの自信に
ソフトバンク・チーム・ジャパンは3位となり、初の表彰台に上った 【写真は共同】
これまでの大会では、ミスを引きずるように次のレースでも成績が振るわないケースが見られたが、今大会のソフトバンク・チーム・ジャパンは違っていた。最終レースではベストのタイミングでスタートを飛びだし、第1マークをトップで回航すると、他の艇を引き離し最後までリードを保って1位でフィニッシュ。今大会の全4レース中、2レースでトップを獲得した。
結果としては12日の2レース目の順位がひびき、合計ポイントでシカゴ大会の総合3位となったが、ソフトバンク・チーム・ジャパンは初の表彰台を経験。大会に参加している6チームのうち、各レースでの1位フィニッシュも表彰台も経験していないのはソフトバンク・チーム・ジャパンだけだったため、この大会で他のチームと実力的には並んだと言える。
レース後、早福総監督は「チームが立ち上がって1年。これまでやってきたことがようやく成果として表れてきたシカゴ大会だったと思います。この勝ちパターンを続けてさらに上を目指していきたいです」と力強く語っている。
またディーン艇長も「メンバー同士の歯車がスムーズに回り始めてきたことを実感しました。次のポーツマス大会も楽しみです」と、今大会での戦いが大きな自信となったようだ。
11月には、福岡でワールドシリーズ第9戦がアジアで初めて開催されることが決まった。福岡大会、さらには来年の本大会まで、この歯車をかみ合わせたまま戦ってほしい。
1位:アルテミス・レーシング(スウェーデン)/61ポイント
2位:ランドローバー・BAR(イギリス)/58ポイント
3位:ソフトバンク・チーム・ジャパン(日本)/56ポイント
4位:エミレーツ・チーム・ニュージーランド(ニュージーランド)/51ポイント
5位:オラクル・チーム・USA(米国)/49ポイント
6位:グルパマ・チームフランス(フランス)/40ポイント
■ワールドシリーズ総合成績(第6戦終了時点)
1位:エミレーツ・チーム・ニュージーランド(ニュージーランド)/295ポイント
2位:ランドローバー・BAR(イギリス)/285ポイント
3位:オラクル・チーム・USA(米国)/285ポイント
4位:アルテミス・レーシング(スウェーデン)/262ポイント
5位:ソフトバンク・チーム・ジャパン(日本)/259ポイント
6位:グルパマ・チームフランス(フランス)/234ポイント
※同点の場合、上位の回数が多いチームが上になる
(協力:ソフトバンク・チーム・ジャパン)