当事者なのにどこか客観的なイチロー 記録達成後の会見で見せた表情

丹羽政善

いつかは大リーグだけでローズ超えを

イエリッチも祝福のハグ 【田口有史】

 それでもイチローにも意地がある。直接的な明言は避けたが、もちろんいつか、大リーグでローズを捉えたい。
 
「僕は子供のころから、人に笑われてきたことを常に達成してきている自負はある。例えば、小学生のころに毎日、野球を練習して近所の人から『あいつ、プロ野球選手にでもなるつもりか?』っていつも笑われていた。悔しい思いもしましたけど、でもプロ野球選手になった。何年かやって、日本で首位打者をとって、今度、米国に行くときに首位打者になってみたい。そんなときもやっぱり笑われた。でも、それも2回達成した。常に人に笑われてきた悔しい歴史が僕の中にはあるので、これからもそれをクリアしていきたい思いは、もちろんあります」

 大リーグ通算でローズを捉えるとしたらあと1277安打が必要。年間200安打以上を記録しても6年はかかる数字だ。笑う人がいるだろう。しかし、これまで有言実行でここまで来た。イチローのキャリアにはまだまだこの先がある。

マーリンズでプレーする理由

 ところで、なぜ、マーリンズと再契約したのか。会見ではその一端がうかがえた。

「(メジャー)16年目なんですけど、米国に来て。途中、チームメート、同じ仲間であってもしんどかったことは、たくさんあったんですね。去年、このチームに来て、1年一緒にやって、今年は少しメンバーが変わったんですけど、チームメートとしては最高のチームメートとはっきり言える“子たち”ですよね。年齢差から言えば。本当に感謝しています、彼らに」
 
 さらに言った。
 
「同じユニホームを着た人に足を引っ張られないということは大きいですね。本当にいい仲間だと思います」
 
 かつて、嫉妬するチームメートがいた。そんな“しんどかった”時代に比べて今は、様々な記録を自分のことのように喜んでくれるチームメートに囲まれている。彼らとなら、特別な瞬間がより特別になる――。メモリアルイヤーを控えての再契約は、必然だったのかもしれない。

(文中敬称略)

2/2ページ

著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント