コロナ禍のラスベガスで井上尚弥が戦ったバンタム級防衛戦 挑戦者モロニーが「見えなかった」と振り返るパンチ
2013年4月、井上尚弥のプロ3戦目の相手を務めた佐野友樹はそう叫んだ。
それからわずか1年半、世界王座を計27度防衛し続けてきたアルゼンチンの英雄オマール・ナルバエスは、プロアマ通じて150戦目で初めてダウンを喫し2ラウンドで敗れた。「井上と私の間に大きな差を感じたんだよ……」。
2016年、井上戦を決意した元世界王者・河野公平の妻は「井上君だけはやめて!」と夫に懇願した。
WBSS決勝でフルラウンドの死闘の末に敗れたドネアは「次は勝てる」と言って臨んだ3年後の再戦で、2ラウンドKOされて散った。
バンタム級とスーパーバンタム級で2階級4団体統一を果たし、2024年5月6日に東京ドームでルイス・ネリ戦を控えた「モンスター」の歩みを、拳を交えたボクサーたちが自らの人生を振り返りながら語る。第34回ミズノスポーツライター賞最優秀賞に輝いたスポーツノンフィクション『怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ』から2020年10月31日に開催された井上尚弥vs.ジェイソン・モロニーの戦いを一部抜粋して公開します。
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【Photo by Steve Marcus/Getty Images】
(オーストラリア)
2020年10月31日 米ラスベガス・MGMグランド・カンファレンスセンター
7ラウンド 2分59秒 KO
WBA世界バンタム級王座4度目、
IBF世界バンタム級王座2度目の防衛
井上の戦績 20戦全勝17KO
コロナ禍の聖地で
初回、ジャブの差し合いでスタートした。井上の左が速い。モロニーがパンチを放つと、あっさりバックステップで外された。一回り大きいモロニーは必死にプレスをかけようとした。次のラウンドは手数を増やした。だが、中盤から鋭いジャブを被弾し、腹にも右が伸びてくる。残り15秒で右を食らい、打ち返すとカウンターで左のフックが飛んできた。
「井上に対しての怖さはなかったよ。でも、彼は私がやりたいことをやらせてくれないんだ。本当はフィジカルを生かして、もっとプレッシャーをかけたかったんだけどね」
接近して中に入ろうとすると左ボディー、右アッパーが突き上げてくる。連続的に恐ろしく速いパンチが飛んできた。少し距離が空くと、力強いパンチが伸びてくる。
「とても速く、どの距離になっても質の違うパンチが飛んでくる。とてもクレバーな選手だなと思ったね」
ほんの少しだけ休もうと、一瞬気を緩めると、そのわずかな隙を狙ってパンチが飛んできた。ボクサーは3分の間、ずっと集中力を持ち続け、マックスの緊張感を保つのは難しい。
そうかと思えば、パンチを打ちにいくと、必ずと言っていいほどカウンターを食らった。パンチを出すたび、打ち返される。少しでもガードが空いたところをめがけてパンチが伸びてきた。
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