“レブロン対カリー”だけではない激突 激闘必至のNBAファイナル展望

杉浦大介

チーム状況の良さはキャブズが上

カンファレンス・ファイナルでオクラホマシティ・サンダーと激闘を繰り広げたウォリアーズ 【Getty Images】

 ただ、近況のチーム状況の良さではウォリアーズよりもキャブズが上であり、一方的なシリーズになると予想されているわけではない。今プレーオフ突入以降、キャブズは12勝2敗の快進撃。多くの主力が見事に噛み合い、個人プレーは影を潜め、流麗なパスワークを展開するようになっている。

 特にレブロン(今プレーオフ平均24.6得点、8.7リバウンド)、カイリー・アービング(同24.3得点、5.1アシスト)という2大プレーメーカーが絶好調。この2人が作ったスペースを生かし、ケビン・ラブ(同3点シュート成功率44.6%)、J.R.スミス(同46.2%)、チャニング・フライ(同57.8%)、イマン・シャンパート(同47.4%)といったシューターたちが外からロングジャンパーを決める必勝パターンを確立してきた。

 コンディションが万全なのも大きい。去年のプレーオフでは第1ラウンドでラブが、ファイナル第1戦でアービングが故障離脱し、以降のキャブズは青息吐息だった。しかし、現時点で目立ったけが人は皆無。ウォリアーズがサンダーと激闘を繰り広げたのを尻目に、キャブズはトロント・ラプターズとのイースタン・カンファレンス・ファイナルを5月27日には終わらし、中4日という最高のスケジュールで決戦に挑んでくる。

「いつか生まれ故郷に恩返しがしたい。(優勝の味を)僕の故郷はもう長く味わえていない。目標は可能な限り多くの優勝を経験することだが、それをオハイオ州北東部にもたらすことが今の僕には何よりも大切なんだ」

 14年夏、そんな手記とともに故郷のチームであるキャブズに戻ったレブロンにとっても、今プレーオフはキャリアのレガシーを左右する大一番である。

“選ばれし男”レブロンへの期待

 誰もが羨む輝かしいキャリアを過ごしてきたレブロンだが、ファイナルでの通算成績は実は2勝4敗。マイケル・ジョーダン(6戦全勝)、カリーム・アブドゥル=ジャバー(6勝4敗)、ラリー・バード(3勝2敗)、マジック・ジョンソン(5勝4敗)、ビル・ラッセル(11勝1敗)、ティム・ダンカン(5勝1敗)といった歴代の多くのレジェンドたちが勝ち越しているのと比べ、やや物足りないのも事実ではある。しかし、ここでシーズン最多勝記録を更新したばかりのウォリアーズを下し、キャブズを史上初のファイナル制覇に導けば、すべての雑音を吹き飛ばすことができる。

 一般的にウォリアーズ有利の前評判とはいえ、チーム全体が健康、好調のキャブズとレブロンにもういいわけは残されていない。1964年以降のクリーブランド・ブラウンズ(NFL)を最後にクリーブランドはメジャースポーツの優勝から見放されている。そんな不遇の街に栄冠は戻ってくるのか。10代の頃から“選ばれし男”と呼ばれたレブロンは、キャブズを史上初のファイナル制覇に導き、自らのキャリアに新たな勲章を加えられるのか。

 さまざまな想い、スリリングな予感が交錯し、期待感は高まるばかり。激闘必至の16年NBAファイナル開始まで、もうあとわずかである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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