エアレース室屋が世界の舞台に昇るまで “マネーの虎”も動かす情熱と行動力
日本人唯一のエアレースパイロット
エアレースとは、小型飛行機を操ってコース上のパイロン(円すい形のゲート)を通過しタイムを競う「究極の三次元モータースポーツ」とも呼ばれる競技だ。その人気は世界ラリー選手権(WRC)やダカール・ラリーといった有名レースを凌ぎ、F1、motoGPに次ぐとも言われている。
世界屈指のエアレース・シリーズに日本人唯一のパイロットとして参戦しているのが室屋義秀だ。エアレースをはじめスカイスポーツが定着しているとは言い難い日本から、なぜこのようなトップパイロットが生まれたのだろうか。
日本におけるエアロバティックス(曲技飛行)の第一人者に、これまでの歩みを尋ねると、その道のりは運命的な出会いと、困難をはねのける情熱に彩られていた。
29歳にして3000万円の借金
そして2002年、29歳になった室屋は荒海に飛び出す。「お金を貯めちゃ訓練し、というのを繰り返していても、にっちもさっちもいかないわけです。ただ訓練するだけで、だんだん歳も食ってきて、生活も含めてどうにかしなきゃいけない」と、行き詰った状況を打破すべく、自身のエアショーチームを立ち上げたのだ。
最上位クラスを目指すには相応の機体が必要となる。そこで室屋は、借金をして高性能な機体の購入に踏み切った。その額、3000万円。
「飛行機さえあればなんとかなる、飛行機があればスポンサーがつくんじゃないか、みたいな幻想を抱いていました」
しかし展望は開けなかった。29歳にして多額の借金を抱え、真新しい機体の横で苦しんでいた当時を、室屋は「本当に際どかった」と振り返る。
「とりあえず自分で始めてみたんですけど、誰も成し得たことがない、前例のない世界でそんなにうまくいくわけない。でも飛行機も買っちゃったし、困り果てていました」