大坂なおみ「誰が相手でも戦える」
急成長を支える“勝負師のメンタル”

ハレプを脅かした2つの戦略

ハレプとの大一番でも、敗戦の経験を生かし堂々とプレー。敗れはしたものの、第1セットを奪うなど善戦した
ハレプとの大一番でも、敗戦の経験を生かし堂々とプレー。敗れはしたものの、第1セットを奪うなど善戦した【Getty Images】

 舞台を「家族テニス」から、テニス界最高峰の大会群「グランドスラム」に移しても、その“哲学”に変わりはない。4カ月前の全豪で、スタジアムの雰囲気とビッグネームに飲まれた経験を、大坂はローランギャロスの第2コートで生かしてみせた。


「サービスをしっかり入れること。そして相手が得意とするストレートへの切り返しを封じること」


 シンプルに心に刻んだ2つの戦略を、彼女は忠実に実行する。鋭いスピンを掛けたフォアのクロスを切り札に、ブレーク合戦となった立ち上がりの攻防から、第1セットは大坂が一気に抜け出した。圧巻は、ゲームカウント2−4とリードされてからの4ゲーム連取。第8ゲームでは左右に走らされながらも、鋭角にコートを裂くクロスのウイナーで、観客の度肝を抜いた。第10ゲームでは、時速190キロのサービスをセンターにたたき込み、続くポイントでは一転、125キロのスピンサーブで相手のリズムを崩す。その瞬間、日頃は自制心の強いハレプが、怒りにまかせラケットを投げつけた。


 しかし第2セットに入ると、「早いタイミングでボールを捕らえ、彼女(大坂)の時間を奪い強打を封じようと思った」というハレプが、ミスの増えた大坂の手元から、スルスルと主導権を抜き取っていく。


「最後は経験がモノをいった」


 勝者は安どに胸をなでおろした。

「必要なのは経験と戦略」

「第2セットで彼女が私のプレーに対応してきた時、私はまだまだ未熟者だから、パニックになってしまったの」


 試合後に敗因を分析しつつ、自称“未熟者”は言う。


「私に必要なのは経験と戦略。パワーやストロークは、十分に渡りあえると思った」


 本人は、「うぬぼれ屋」だと思われることを、過度に心配する。だが、今日の試合を見た者は誰一人として、大坂なおみを、うぬぼれているとは思わないはずだ。

内田暁

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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