大坂なおみ「誰が相手でも戦える」 急成長を支える“勝負師のメンタル”

内田暁

3回戦敗退もつかんだ手応え

テニスの全仏オープンで3回戦進出を果たした大坂なおみ。急成長を支える“勝負師のメンタリティー”とは? 【写真:ロイター/アフロ】

「生意気みたいに聞こえちゃうのは、嫌なんだけれど……」

 記者達に懇願しながら、大坂なおみは、小さな、しかし確信に満ちた声で続けた。

「今日の試合で私は、世界のトップ10プレーヤーとも戦えると感じていた。誰が相手でも戦える。ただ、もっとプレーを安定させることと、パニックにならないようにしなくてはいけないなって」

 初めて挑んだ全仏オープン。初めて立った“コート・スザンヌ・ランラン”。そして、初めて相対したトップ10プレーヤー――。

 大坂なおみの18歳の挑戦は、世界6位のシモナ・ハレプ(ルーマニア)に1−2(6−4、2−6、3−6)で敗れ、1月の全豪オープンに続き3回戦で終幕した。しかし、全豪時とのスコアの差異が、そして試合後に口にした手応えの言葉が、この4カ月の間にたどった急成長の跡を、克明に浮かび上がらせていた。

両親も認める“究極の負けず嫌い”

全豪オープンではアザレンカに完敗。それでも、悔しさの中から成長の糸口を見出そうとしていた 【写真:ロイター/アフロ】

「正直、こんなふうにコテンパンにやられて、少し良かったと思っている。だってこの経験から、多くを学ぶことができたから」

 大坂がそう言ったのは、4カ月前の全豪オープン3回戦のセンターコートで、ビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)に0−2(1−6、1−6)で敗れたとき。疲労と緊張から持てる力を出し切れなかった18歳は、完敗の屈辱からも、必死に何かをつかみ取ろうとしていた。自ら「私、顔の筋肉が動きにくいみたいなの」と言う程に変わらぬ表情からは、胸の内を推し量ることは難しい。だが、究極の負けず嫌いだという根っからのアスリートが、悔しさを感じていないはずはなかった。

「あの子は、負けず嫌いなんてもんじゃないですよ」
 
 大坂の母親は、わが子のことを、そう評した。

「子供の頃からいつも相手のことを観察し、どうやったら倒せるかを常に考えているようだった」

 父親もまた、娘に幼い頃から備わっていた、勝負師のメンタリティーを証言する。

 2歳年長の姉、そして父親と3人で練習していた幼少期、大坂はいつも、負け役だった。

「つまらなくて、止めたいと思っていた」

 そう振り返る日々からも大坂家の末っ子は、負けん気と相手を分析する観察眼、そして、敗戦の経験を次に生かす術を体得していったのだろう。

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著者プロフィール

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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