打倒白鵬へ、稀勢の里にかかる重圧 名古屋は積極相撲で横綱と戦えるか!?
繰り返される大一番からの連敗
大一番となった13日目。一時は稀勢の里優位な体勢となるも、最後は白鵬が下手投げで勝利した 【写真は共同】
「集中してやれたと思います」と話していたが、3月場所も白鵬に敗れた翌日は日馬富士に一方的な相撲で連敗を喫した。3年前の平成25年5月場所は初日から13連勝したが14日目、白鵬との全勝対決に敗れると千秋楽は琴奨菊に電車道で寄り倒された。いずれも腰高な立ち合いだったため、相手に踏み込まれて上体が起きてしまい、最後まで主導権を握れなかったことが敗因だ。同じような失敗は大一番を落として気持ちがうまく切り替えられず、立ち合いに集中しきれなかったからではないだろうか。
変わらない“孤軍奮闘”の構図
とは言え、来場所も過酷な15日間が待ち受けている。過去のパターンから言って、中盤までを無難に乗り切れば終盤は追い風が吹く白鵬と違い、稀勢の里は最後まで気が抜けない闘いを強いられる。白鵬戦を乗り切ったとしても、その前後で優勝圏外に外れても一発勝負にかけてくる“刺客”を次から次へと迎え撃たなくてはならず、まさに“孤軍奮闘”だがこの構図は数年来、変わっていない。
難攻不落の壁は単に白鵬に勝つだけでは崩せないから厄介だ。3月場所のように豪栄道も優勝争いに加わってくれれば、多少なりとも白鵬にプレッシャーがかかりそうだが、それでも稀勢の里が背負うそれとはまるで比にならない。来場所の予想番付からいけば、白鵬の序盤は高安、栃煌山、宝富士、隠岐の海、大砂嵐ら、骨のある相手が予想される。序盤にもたつく傾向にある白鵬にとってこの連戦は嫌に違いないが、稀勢の里や豪栄道以外に最強横綱撃破を彼らに期待せざるを得ない現状とも、綱取り大関は戦わなくてはならないのだ。
10代で入幕を果たし10年以上にも渡って“国産力士”としての期待を一身に浴びてきた男も、次の場所は30歳で迎えることになる。過去5度の13勝を振り返れば亀の歩みかもしれないが、心身ともに着実に成長を遂げているのは確かだ。
「ここからだと思っている。楽しみです」
自らを「晩成型」と呼ぶ大関が三十路の大台で再び、高くて険しい壁に挑む。