チームの変化に振り回された南野拓実 戦い続けてつかんだ自信、人としての成長
序盤は南野が好調、しかしチームの調子が上がらず
ザルツブルクで3年連続2冠達成に貢献した南野(左)。今季はさまざまな紆余曲折があった 【Getty Images】
レッドブル・ザルツブルクでプレーする南野拓実にとって、今季は紆余(うよ)曲折さまざまなことがあったシーズンとなった。前半戦はレギュラーとしてゴールを連発し、得点ランキングでも上位に名を連ねた。欧州で大事だといわれたその結果を出してきた。だがそんな南野の好調ぶりと反比例するように、チームは序盤から取りこぼしの連続で、なかなか調子に乗れない時期が続いてしまう。
嫌な予感はシーズン前からあった。昨季チームを2冠に導いたアディ・ヒュッター監督が、チーム作りに関する見解の不一致を理由にクラブを去ってしまったのだ。当初は「監督が代わってもザルツブルクサッカーは変わらない」と首脳陣は息巻いていたが、そうそう自分たちのイメージ通りの仕事をしてくれる優秀な人材がいるわけではない。結果は度重なる監督交代という自滅的なシナリオ。ザルツブルクには、自分たちのサッカーと向き合う余裕がなくなっていた。まずは勝たなければならない。優勝を逃して、来季欧州の舞台に立つチャンスを逃すことはクラブにとって致命的なことだから。
チームのサッカーが変化し、出番を失う
最終的に結果というものが成功のすべてを表すのならば、3年連続となるリーグとカップ戦のダブルを達成したザルツブルクも成功に入るのだろう。しかし、バイエルンのジョゼップ・グアルディオラ監督の「タイトルは数字でしかない」という言葉にも表れているように、どのようなサッカーを目指し、そして実践していたのかも、忘れてはならない大事な視点ではないだろうか。
得点王のソリアーノとMVPのケイタ。この二人の力もあって、優勝は果たした。だが、二人がとても窮屈なプレーを余儀なくされていた点も見逃せない。負けないサッカーをするために理想のサッカーを封印する。言葉にすればそういうことなのかもしれない。だが、ソリアーノとケイタの才能を生かし、伸び伸びとプレーさせることができれば、当然チームパフォーマンスレベルも上がるし、より高いレベルのサッカーを目指すことができるのだ。そしてその役割こそが、南野が担うべきはずのものだった。
出番が減少した時期も懸命にプレー
チームのサッカーが変化し、出番を失う。それでも、与えられた時間で献身的なプレーを見せた 【Getty Images】
現地時間4月20日のオーストリアカップ準決勝オーストリア・ウィーン戦(5−2)では出場時間は終了間際の5分間にとどまった。チームがどんどん点を重ねてくのをウォーミングアップをしながら見守った。悔しさはあったはずだ。でもそれを表に見せたりはしなかった。ネガティブな思いはすべてのみ込み、チームの得点をほかの控え選手、スタッフと一緒に肩を組んで喜んだ。そして5分間しか出場時間がなくても、守備に攻撃にと走った。一度のチャンスのために。この日は来なくてもいつか来ると信じて。
試合後、チーム内で今の立ち位置について聞いてみたら、「まあ、がっつりスタメンをキープしているわけではないですけれど、チームのためにやって、貢献できている自負はあります。それを続けていければいいと思います」と力強く答えていた。