梶谷、筒香復帰でDeNAに反攻の兆し 投打の“ねじれ”解消で混セの中心へ

日比野恭三

指揮官も「うれしい誤算」の倉本

ラミレス監督も「うれしい誤算」と認める活躍を見せる2年目の倉本 【(C)YDB】

 DeNA攻撃陣の好材料をもう一つ挙げるとすれば、それはプロ2年目、倉本寿彦の成長だろう。東京ドームでの巨人戦で満塁の走者を一掃する三塁打を放った4月23日、打率が3割を超えた倉本について、指揮官は正直にこう語った。

「うれしい誤算だ。遊撃手として守備力は高く評価しているが、シーズン当初は(ここまで打つとは)期待していなかった。試合に出続けていることが自信につながっているのではないか」

 倉本の打撃好調は一過性のものでは終わらなかった。その後も主に6番打者としてコンスタントに安打を放ち、5月6日から6試合連続マルチ安打を記録するなど、打率は一時3割5分まで上昇した。ルーキーだった昨季は51安打の打率2割8厘に終わったことを考えれば、すでにそれを上回る52安打をマークした今季は飛躍的な成長を遂げたと言える。

柔軟な姿勢で確実性アップ

 倉本は言う。

「去年のシーズン中は、コーチの話を聞いてもうまく理解できないくらいの状態で、これではちょっとやばいなと思っていました」

 危機感を抱いた倉本は、試行錯誤を続けた。足の上げ方やバットを構えた時の左ヒジの位置。さらに逆方向へ打球を飛ばす練習も意識的に行った。「(対戦する)投手は毎日違いますから」と、柔軟な姿勢で打席に臨んでいることが結果につながっている。

 5月12日の中日戦、延長10回裏に無死満塁で回ってきた打席では初球をレフト前に弾き返してプロ初のサヨナラ打。遊撃手の守備でも無失策を続けており、「守るだけではずっと試合に出続けることはできない。攻撃の面でも少しでも貢献していきたい」と語る25歳は、攻守にわたってチームに欠かせないピースとなっている。

戦力そろうも打線のつながりが課題

 戦力がそろいつつある一方で、打線が有機的なつながりを生むまでには至っていないのも事実だ。筒香は復帰後3本のホームランを打っているが、いずれもソロ。その前を打つ梶谷は積極的な走塁を見せてはいるものの、打率は2割2分9厘と本調子とは言い難い。走者を溜めて、筒香、ロペスが打点を稼ぐ。そうした理想の攻撃スタイルを一日でも早く形にしたい。

 5月15日の阪神戦後、9回のサヨナラ機に一本が出なかった梶谷はこう明かした。

「ネクストにいる時から、もう決めてくれと思っていた。普通の状態なら『おいしいわ』と思うはずなのに……今はそれぐらいの精神状態なんです。タイミングがまだズレていて、振る前に遅れているから手が出ないということも結構ある。実戦を重ねる中で、探っていくしかない」

アベレージ期待の新外国人が加入

 奇しくもこの日、球団は新外国人選手エリアン・エレラ(米大リーグ・ドジャース3A)の獲得を発表した。31歳のエレラはドミニカ共和国出身のスイッチヒッターで、本職は二塁手だが、遊撃手や三塁手、外野もこなせるという。

 高田繁GMは「アベレージを期待できる。ポジション的にも、二塁手や三塁手といった補強ポイントに合致していて、チーム事情に合った選手。うまくいけば、3番に置いて梶谷を2番にする打順も考えられるのではないか」と期待感をにじませた。ラミレス監督が当初思い描いていた「2番・梶谷」に始まり、エレラ、筒香、ロペス、倉本という中軸打線が機能しだせば、他球団にとっては十分脅威となるはずだ。

 計算できる先発が揃うDeNAのチーム防御率(3.18)はリーグトップ。いまだリーグワーストのチーム打率(2割3分6厘)との“ねじれ”が解決されれば、混セの中心に躍り出ることは決して考えられない話ではない。残り101試合。主役の揃ったDeNAはようやくスタートラインに立ったと言えるのかもしれない。

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著者プロフィール

1981年、宮崎県生まれ。2010年より『Number』編集部の所属となり、同誌の編集および執筆に従事。6年間の在籍を経て2016年、フリーに。野球やボクシングを中心とした各種競技、またスポーツビジネスを中心的なフィールドとして活動中。

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