新強竜打線の4番・ビシエドの打撃論 球団創設80周年に5年ぶりの歓喜を
ドラマ性のある活躍でチームを首位に
5月9日時点で打率はリーグ5位、本塁打は同3位、打点は同2位の好成績を残すビシエド 【写真は共同】
ビシエドが放った本塁打は、実にドラマチックだ。4月17日の阪神戦(ナゴヤドーム)では延長10回に福原忍からライトポールを直撃する6号サヨナラ2ラン。同24日の東京ヤクルト戦(ナゴヤドーム)では、2点を追う8回に「最高のシチュエーションで回してもらった。最高に興奮した。一振りで変わるのが野球」と、ルーキから左中間スタンドへ逆転の7号グランドスラム。まさに試合を決定付けるひと振りで球場を沸かせ、ファンを虜にした。球団創設80周年を迎えた中日ドラゴンズにおいての“史上最強の外国人打者”との期待も、まんざらではなくなっている。
谷繁監督も評価する対応能力
「対戦の中でしっかりと研究しているから、たとえ3打席結果が悪くても、4打席目で必ず修正ができている」
劣勢のまま終盤を迎えても、ビシエドに回すことで何かが起きそうな雰囲気がある。そして、ホームランバッターにありがちな“穴”というべき弱点がない、もしくはまだ明かされていない。現に、セ・リーグの本塁打ランキングの上位5人の三振数を比べると、ビシエドの18三振が最も少なく、次いでヤクルト・バレンティンと山田哲人が23三振。広島・エルドレッドの27三振や阪神・ゴメスの33三振と比べると、ビシエドのしぶとさと確実性が際立つ。
この安定した打撃を続けられる要因を探ると、「(ホームランは)狙って打とうと思ったことはない。ベースの上に来たボールにバットを当てるだけだよ」と、ホームランに対するビシエドの打撃論が浮かび上がる。この主張は一貫しており、4月15日の阪神戦(ナゴヤドーム)で10試合ぶりの本塁打となる5号3ランを放った際にも「ホームランが出ていなくても特に心配はしていないし、自分のスイングをしっかりすれば問題ない」とコメントしている。
その言葉を紐解くに、ビシエドは完璧にボールを捉えなくても、驚異的なスイングスピードとパワーによって、詰まり気味でもスタンドまで打球を運ぶことができるということ。ホームランは狙わずに自身の打撃を貫き、外野フェンスを越えるかどうかは、彼にとってはあくまで結果論なのだ。