新強竜打線の4番・ビシエドの打撃論 球団創設80周年に5年ぶりの歓喜を

ベースボール・タイムズ

ドラマ性のある活躍でチームを首位に

5月9日時点で打率はリーグ5位、本塁打は同3位、打点は同2位の好成績を残すビシエド 【写真は共同】

 ファンが待ち焦がれた“理想の4番”とは、まさしく彼のような存在であったと確信させてくれる。キューバ出身のスラッガー、ダヤン・ビシエド――。来日1目の外国人選手としては史上初となる開幕3試合連続本塁打の鮮烈デビューから、5月7日の巨人戦(東京ドーム)では史上19人目となる1イニング2本塁打など、開幕から35試合を終えて打率3割2分8厘、11本塁打、28打点をマーク。この男の加入で、2年連続でリーグワーストの本塁打数を記録していた中日打線は一気に厚みを増し、今季の18勝のうち11試合が逆転勝利。首位に躍り出るまでの好スタートを切った。

 ビシエドが放った本塁打は、実にドラマチックだ。4月17日の阪神戦(ナゴヤドーム)では延長10回に福原忍からライトポールを直撃する6号サヨナラ2ラン。同24日の東京ヤクルト戦(ナゴヤドーム)では、2点を追う8回に「最高のシチュエーションで回してもらった。最高に興奮した。一振りで変わるのが野球」と、ルーキから左中間スタンドへ逆転の7号グランドスラム。まさに試合を決定付けるひと振りで球場を沸かせ、ファンを虜にした。球団創設80周年を迎えた中日ドラゴンズにおいての“史上最強の外国人打者”との期待も、まんざらではなくなっている。

谷繁監督も評価する対応能力

 谷繁元信監督はビシエドに対して、対応能力の高さを挙げる。

「対戦の中でしっかりと研究しているから、たとえ3打席結果が悪くても、4打席目で必ず修正ができている」

 劣勢のまま終盤を迎えても、ビシエドに回すことで何かが起きそうな雰囲気がある。そして、ホームランバッターにありがちな“穴”というべき弱点がない、もしくはまだ明かされていない。現に、セ・リーグの本塁打ランキングの上位5人の三振数を比べると、ビシエドの18三振が最も少なく、次いでヤクルト・バレンティンと山田哲人が23三振。広島・エルドレッドの27三振や阪神・ゴメスの33三振と比べると、ビシエドのしぶとさと確実性が際立つ。

 この安定した打撃を続けられる要因を探ると、「(ホームランは)狙って打とうと思ったことはない。ベースの上に来たボールにバットを当てるだけだよ」と、ホームランに対するビシエドの打撃論が浮かび上がる。この主張は一貫しており、4月15日の阪神戦(ナゴヤドーム)で10試合ぶりの本塁打となる5号3ランを放った際にも「ホームランが出ていなくても特に心配はしていないし、自分のスイングをしっかりすれば問題ない」とコメントしている。

 その言葉を紐解くに、ビシエドは完璧にボールを捉えなくても、驚異的なスイングスピードとパワーによって、詰まり気味でもスタンドまで打球を運ぶことができるということ。ホームランは狙わずに自身の打撃を貫き、外野フェンスを越えるかどうかは、彼にとってはあくまで結果論なのだ。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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