手倉森監督「ジャパンを奮い立たせたい」 U−23代表 ガーナ戦メンバー発表会見
スピードとパワーを示せる選手が生き残る
チームの中心的存在でもある遠藤だが、ACLを戦うなどの過密日程による疲労が考慮され今回は選出されなかった 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】
手倉森 軸になりたければ頑張るでしょう。間違いなくこのメンバーはそのチャンスがありますので、覚悟を示してほしいと思います。本大会をしっかりと思い描きながら、これからは活動するべきだと思っています。本大会を考えると、求められるのはタフさです。環境が整っているこの日本で試合をしたときは、今ある力を存分に発揮しなければいけない。スピードとパワーを示せる選手が生き残っていくだろうなと思います。
――浦和レッズの遠藤航や柏レイソルの中村航輔が呼ばれていないが、その理由は?
霜田 いろいろな理由があります。この後にトゥーロンを控えていますので、ここで呼ばなくてもトゥーロンで見られます。また、ACLが控えていて、過密日程で日本の代表として戦わなければいけないクラブ、そういう選手には疲労も含めて考慮しています。1人1人理由が違いますので、ここにいない選手全員の説明はできませんが、遠藤と中村に関してはそういう感じです。
――東日本大震災の時は、ベガルタ仙台の監督として4位になり、その次の年はサンフレッチェ広島と優勝争いをした。逆境を力に変える姿を見せてくれたが、今回は五輪がある年に熊本地震が起きた。今回のチャリティーマッチの意義をどのように感じているか?
手倉森 まず、打撃を受けた被災地。思いは悔しさ、悲しみに溢れている。人生悪いことも起きるが、良いことも人間の力で起こさなければいけない。スポーツの力で明るいニュースを届けることができるということを東日本大震災のあとのベガルタでものすごく感じました。
国民の思いを背負って戦うことで、日本代表やチームというのは思いもよらない力を発揮できると感じています。そういうことを分かっている指揮官として、今回のメンバーに対しても被災地の思い、そして五輪への国民の思いをしっかりと胸に刻んで戦うことができれば、人は多くのパワーを注ぐことができると思っています。そのパワーを注いだ先には、必ず良いニュースが届けられるんだ、ということを示さなければいけない。日本の歴史を変えるべく、ひとつ大きなものを背負った状況でわれわれは戦うことが課せられたと考えたときに、そういった力が必要なんだなと認識して、打撃を受けた被災地、九州の力、そして日本の力を世界で示せればいいなと思っています。そういうことが示せる集団だということを、今回(ガーナ戦)の90分で示したいと思います。
――主力と思われていた選手が続々とけがをしている。オーバーエイジ(OA)も呼べないかもしれないという状況ながら、どうしてそんなに元気なのか?
手倉森 僕は人よりもイライラする沸点が高いんだろうなと思います。あと、自分の幅にも広さがあるなと自分の中でも感心しています。まず、これまでの五輪代表監督の感情だったり仕事ぶりを自分なりに検証してきて、今この立場で仕事させてもらっています。OAを呼ぶことは非常に困難な仕事です。だから、自分の中では“こんなん”でしょ、と思っています(笑)。
勝負を挑むときに戦う仲間には必ず縁があるものだと思っています。今けがをしているメンバーは決して縁がないのではなくて、果たして誰が戻ってくるんだろうな、という期待感があります。OAありきではなく、U−23世代の大会だという考えがしっかりとあって、リオで(活躍して)この世代を次のロシア(ワールドカップ)の選手選考に食い込ませたいし、困難で選べない状況でもプロジェクトは大きく進むと思っている。まあなるようになるなと自分の中ではいつも思っています。
ただ、7月1日まで時間があって、その中でやるべきことをやっていければ、その先にやるべきことは明確になっていくと思います。実際に最終予選までもいろいろ試行錯誤しながら、苦しみながら「最後は勝てばいいだろう」という思いでアジアチャンピオンにもなれたし、こういうスタンスでいることでいろいろな力が寄ってきてくれるのかなと。最後までこの態度でいられればいいなと思います。
もっとメリハリを持ったチームに
手倉森 このメンバー構成をみると、4−4−2です。アフリカ勢やそれぞれの国々を見たときに、ものすごく若さからくるゲームコントロール力が間延びする状況が見られている。特にアフリカ勢はそうです。オープンにした状況で戦うと絶対に身体能力でやられる。コンパクトさを武器に戦うためには、4−4−2だなと思っています。これは自分の中で思っていることですが、それを確信に変えられるように今回の試合でトライしていきたいと思います。負けたら違うことをやります(笑)。
――今後の国際試合で、トライしていかなければいけないことは何か?
手倉森 選手1人1人にもっとポリバレント性を植え付けなければいけない。あと割り切りの部分で、体力の分散と集中力の分散も少し彼らに理解させなければいけない。あとはスピードを高めなければいけないし、柔軟性と割り切り、つまりメリハリが本大会では大事になってくる。メリハリを持ったチームにならないと、最後は体力が枯渇してしまう。そういったことを理解し合えるグループを形成していかなければいけないと思っています。3分の1以上は2つのポジションをできる選手がいなければいけないと、今のところは考えています。
――ガーナ戦後に、トゥーロン国際大会に向けて選手を削る作業があると思うが、選手にはどのように伝えようと考えているのか?
手倉森 トゥーロンではメンバーは入れ替わります。入れ替わることを選手たちに話しながらキャンプをやっていきます。置いていくと決断した選手には、このガーナ戦がものすごく重要になってくるし、そういう意識の中で戦わせたい。いろいろな選手にまだまだチャンスを与えたいと考えた中で、入れ替えて5月は進みたいと思っています。そういう話を(選手たちに)理解してもらいながら、チームとして動いていきたいと思っています。
――ガーナ戦で前後半で大きく入れ替えたり、やったことがないポジションを試してみたりといったことを考えているのか?
手倉森 ゲームの状況に応じて、システムを動かすことができる選手がいれば実行していきたい。それが劣勢なのか攻勢なのか。特に劣勢の時に、そういった違う顔を見せなければいけない。あと、Jリーグで金曜日に試合があるチームがあるので、そのあたりなども考えながら、メンバーの交代を効果的にする必要があると考えています。
――4人のサイドバックがいて、MFに伊東純也がいるが、これはサイドバックと見ているのか? それともサイドハーフの選手と見ているのか?
手倉森 サッカー選手として見ています(笑)。彼は中盤に上がってから、ゴールに直結するプレーができている。4−4−2のサイドアタッカーと、彼はもともとFWもできる。アフリカ勢もスピードありますが、アフリカ勢も驚かせるスピードスターとして、良いタイミングで使えればなと考えています。
――OA枠について霜田さんと監督に聞きたい。海外組のOAは選択肢の中に入っているのか? また、監督の中でOA枠を使わないという選択肢もあるのか?
手倉森 北京(五輪)の時に(OAを)使おうとして使えなかった経験があるので、そういうことも起こり得るのかなと思っています。また、U−23を育成したい。このグループの中ではものすごく楽しい競争が育まれているので、ものすごく成長してきている。その可能性を見たときに、彼らでやり切るというのも一つの手段。
OAを使うという事になれば、彼らはもっと成長スピードを高めなければいけない。最初から使わないとは言い切れないし、幅を持たせるために進めてきた。いろいろな情報をとって、最後に縁がある人がここに組み込まれるだろうなと思っています。
霜田 現場も、日本のサッカーを応援していただいている皆さんも五輪で活躍してほしい、メダルを取ってほしいということが一番だと思います。僕らができる努力は何でもやりたいと思っています。
それと同時に、先日欧州に行き、五輪に対する世界の、あるいは欧州のクラブの肌感覚も感じてきました。4年前と確実に違うのは、23歳は世界の中では若手ではないということ。ビッグクラブでレギュラーを取っている選手たちは、(UEFA)ヨーロッパリーグや(UEFA)チャンピオンズリーグの予備予選の方が五輪よりも大事だと言う現実がある。実際にポルトガルやドイツの協会の方と話しても、実際に23歳以下ですら呼べるかどうか分からないという話でした。
Jリーグは、五輪期間中にも止まりませんが、五輪に選手を出してくれる。国を挙げて応援してくれる。その中で、クラブから五輪に行ってこいと言ってもらえる選手が望ましいと思いますし、海外組は選手がどうしても行きたいと言ったときに、クラブがルールを剥がしてでも、こちらに引っ張ってくることが可能かどうか。現場がトライしてほしいと言うことであれば、それをトライはします。リミットぎりぎりまで現場と話をして、監督がどうしてもOAを連れていきたい、それが海外のクラブであっても一度交渉はしたいと思っています。
ただ、理想と現実の間の中でチーム編成をしなければいけないのが、このアンダーカテゴリーの代表チームの宿命だと思いますので、それも併せて皆さんにご理解いただける中で最善を尽くしたいと思っています。OAに関しては、これからまだまだいろいろな局面があると思いますので、そっと見守っていただけたらと思います。