リーグが誇る名門、完全復活の日は近い 杉浦大介のNBAダイアリー ボストン編

杉浦大介

意外な快進撃の象徴、アイザイア・トーマス

今季チームの得点王になり、初のオールスターにも選出されたアイザイア・トーマス 【Getty Images】

 このトーマスは、11年のドラフトで全選手の中で最下位の全体60位でサクラメント・キングスから指名を受けた選手。それほど低評価された小兵ガードが、熱狂的なボストンの街に最高のハマり具合を見せてきた。そんな事実は、意外な快進撃を続ける無名選手軍団を象徴していると言って良いのだろう。

「現在のNBAでは、適切なキャラクターを備えた選手とケミストリーがとても重要なんだ。精神的に強い選手たちをそろえたおかげで、(ゴールデンステイト・)ウォリアーズは急速に強くなった。それと同様にセルティックスも特別なチームになる途上にいるのだろう」

 15年までウォリアーズ、今年2月までセルティックスに属していたデビッド・リーがそう語っていたことがあった。

 ファイナル2連覇に向けて邁進するウォリアーズとセルティックスを比較するのは少々早すぎる。今春のプレーオフでもホークスに競り勝てたとしても、第2ラウンドでは怪物レブロン・ジェームスに率いられたクリーブランド・キャバリアーズが待ち受けている。この大本命に対抗できるチームになるまでに、セルティックスにはまだやるべきことは多いはずだ。

多くのドラフト指名権を保持

多くのファンが全身全霊でサポートしているセルティックス。名門チームの完全復活の日は近い 【杉浦大介】

 その一方で、このリーグで11年を過ごしてきたリーの言葉を聞くまでもなく、セルティックスが良い方向に向かっているのは事実に違いない。

 プレーメーカーとして確立したトーマス以外にも、24歳のジャレッド・サリンジャー、25歳のケリー・オリニク、22歳のマーカス・スマートなどの楽しみな若手が成長中。前述通りに主力は安価の選手ばかりだけに、FAで大物を獲得できるサラリーキャップ・スペースも保持している。

 今夏にはFAになるケビン・デュラント争奪戦のダークーホースとして、セルティックスを挙げる関係者も少なくない。加えて今年6月のドラフトでは、1位指名権を3つも備えているのだ(さらに5つの2位指名権も持っている)。

「多くのドラフト指名権を保持しているおかげで、トレードのうわさが出た際には必ず私たちもその中に含まれる。さまざまな方向性でもチーム作りが可能という意味で、私たちは良い位置にいるのだろう。これからもフレキシブルな部分を保ったままで向上を続けていきたい」

 スティーブンスHCがそう語っていた通り、セルティックスは将来性のある素材(若手選手)、未来への資産(ドラフト指名権)、頭脳(優秀なコーチ陣)、勝利の伝統のすべてを備えている。そして、選手たちの背後では、多くのファンが全身全霊でサポートしている。そんなチームが、近未来に再び大きく成長しても誰も驚きはしないだろう。

 去年、今年のプレーオフでの活躍は、近未来に訪れる収穫の日の前触れにすぎない。リーグを代表する名門チームの完全復活の日は近い。そして、彼らが魂を削る場所として確立したTDガーデンは、これから先も、すべてのNBAファンにとっての“約束の地”であり続けるはずなのである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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