“最高のレギュラーシーズン”からの卒業 杉浦大介のNBAダイアリー ラプターズ編

杉浦大介

イースタンを代表する強豪に

“チーム史上最高のレギュラーシーズン”を過ごしているラプターズ 【Getty Images】

“チーム史上最高のレギュラーシーズン”

 2015−16年のNBAシーズンも終盤に差し掛かり、トロント・ラプターズの今季はそう形容されるようになった。

 3月23日(現地時間)を終えた時点で48勝22敗。残り12戦のうち1勝すればチーム史上最多勝タイに並び、2勝でフランチャイズ史上初のシーズン50勝に到達する。ここまでくればラプターズの記録更新はもう確実。カナダに本拠地を置くNBA唯一のチームにとって、今季が記念すべき年になることは間違いない。

「これまで積み重ねてきた成果が少しずつ発揮されているのだろう」

 ヘッドコーチ(HC)のドウェイン・ケイシーがそう語る通り、ラプターズは今季に一気に強くなったわけではない。1989−94年まで積水化学リベルテ、いすゞ自動車(現横浜ギガスピリッツ)でコーチを務めたケイシーが11年にコーチ就任後、昨季まで毎年勝利数を増やしてきた。

 09年にドラフト全体9位で入団したデマー・デローザン、12年にトレードで加わったカイル・ラウリーというガードデュオを中心に、過去2年連続でアトランティック地区を制覇。アグレッシブで魅力的なロースターは、徐々にイースタン・カンファンレンスを代表する強豪と認められるようになった。

 ほとんど最高のタイミングで、今年は米国外では初めてとなるオールスターがトロントで開催された。ラウリー、デローザンは地元での“夢の球宴”にそろって出場。2人の看板選手は堂々とホスト役を務め上げ、地元ファンを喜ばせている。

「トロントで史上初のオールスターを開催できるというのは素晴らしいこと。家族がいて、友人がいて、何より僕はデマーと一緒にプレーできる。僕とデマーは血と汗と涙を共に流してきたチームリーダーだから、彼とともにラプターズを代表して大舞台に立てるのは最高なんだ」

 オールスターでのラウリーのそんな言葉を思い返すまでもなく、今ではラプターズのフランチャイズ全体が上り調子に見える。

勝利の実績がないラプターズ

 現在、イースタン・カンファレンスでは大本命のクリーブランド・キャバリアーズに2.5ゲーム差の2位。逆転でのトップシード獲得のチャンスも残っており、チーム創設20年目にしてプレーオフ上位進出の絶好機である。このまま勢いに乗ってポストシーズンで勝ち進めば、もともと血の気も多いカナディアンが沸きかえる姿も容易に想像できる。

 ただ……少々意外なことに、地元トロントにおいて、ラプターズの人気は実はそれほど盛り上がっていないのだという。

 一昨年48勝、昨季は49勝、そして今季と順調に階段を上がってきたにもかかわらず、今年のテレビ視聴率は前年比で約15%のダウン。一部の熱心なファン層を除けば、その熱気はまだ街全体には浸透していないようだ。

 寒冷地のカナダで国民的な人気を誇るのはアイスホッケー。NHLにはカナダに本拠を置くチームが7つもあり、トロントでもメイプルリーフスが絶大な人気を博す。最近はMLBのブルージェイズも話題豊富になったが、ラプターズに対する関心はそれらに匹敵するとはとても言えない。

 過去にダンク王ビンス・カーターの出現で一時的に盛り上がったことはあったものの、ラプターズは基本的にNBAでも影の薄いチームであり続けてきた。95年に創設以降の20年で、勝率5割以上は6度だけ。プレーオフでのシリーズ勝利は01年の第1ラウンドのみで、あとはすべて初戦敗退している。このように勝利の実績がないチームに、人々が愛着を感じられなくても仕方ない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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