手倉森ジャパンがメダルを手にする可能性 考え得る“最強”のクジを引いた日本

川端暁彦

本大会の招集メンバーは未知数

欧州王者として五輪に参加するスウェーデン。イブラヒモビッチのオーバーエイジ起用は難しいと思われるが…… 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 その第2戦で当たるコロンビアは、南米2位になってプレーオフ経由での出場だが、年齢制限が五輪と異なるU−20南米選手権を予選に当ててしまうという、ラテンらしい大らかな措置の結果なので、特に参考にはならない。

 最近のW杯予選を戦うA代表に入っているリオ五輪世代のメンバーはDFエデル・アルバレス・バランタ(リーベル・プレート/アルゼンチン)、MFセバスティアン・ペレス、FWマルロス・モレノ(共にアトレティコ・ナシオナル)、15年コパ・アメリカのメンバーだったGKクリスティアン・ボニージャ(ラ・エキダー)など多数。そしてもちろん、2014年のW杯メンバーであり、日本に4−1で圧勝した試合にも先発していた左利きのマジシャン系MFフアン・フェルナンド・キンテーロ(レンヌ/フランス)もいる。

 第3戦はスウェーデン。北欧の国だけに、暑さで3戦目までに疲労困憊(こんぱい)になっている可能性はあるが、変な期待はしないほうがいいだろう。今回は欧州王者としての参加だが、この予選を兼ねて行われたU−21欧州選手権は実を言うと年齢制限が一つ上の大会。単純な欧州王者ではないのだが、前回のロンドン五輪では欧州各国がこのレギュレーションの違いを加味して年齢的に一つ上の選手(つまり予選を戦った主力)をオーバーエイジとして軒並み起用してきた(スペイン、スイス、ベラルーシ)。スウェーデンも同様の編成で来る可能性は高そうだ。A代表の世界的スーパースター、ズラタン・イブラヒモビッチ(パリ・サンジェルマン/フランス)のオーバーエイジ起用というウワサもあるが、これはさすがに難しいだろう。

 A代表メンバーには190センチ級のDFフィリップ・ヘランデル(ベローナ/イタリア)やルドビク・アウグスティンション(コペンハーゲン/デンマーク)、今季の成長株として注目を集めるビクトル・リンデロフ(ベンフィカ/ポルトガル)がいるものの、スウェーデンは6月に開幕するユーロ(欧州選手権)にも出場する。このため、選手の招集は一層困難になるのではと予想する。

「勝利経験」に優るものはない

手倉森監督は対戦する3カ国について「勝っていくことで成長できる相手」と語っている 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 手倉森監督は対戦する3カ国を「勝っていくことで成長できる相手」と形容した。抽選に関する報道では「死の組」という定番のフレーズも聞かれるが、五輪は日本サッカーの将来を担う若い選手たちにとっての滑走路のようなもの。中途半端な相手とやるより、こういう厳しい組み合わせは「あり」と見るべきだろう。

 もちろん、「勝敗は度外視で、経験重視」などと言うつもりはない。指揮官は本気で勝つつもりであるし、ロンドン五輪では初戦でスペインを打ち倒して勢いに乗り、メダルまであと一歩というところへ迫った実績もある。W杯に比べれば、五輪がはるかに上位進出を狙いやすい大会であるのも確かな事実だ。「予選」をしっかりしたメンバーで戦っている国が数えるほどしかなく、チームとして真剣勝負の経験値を持っている国はアジアや北中米などに限定されるからだ。

 若い選手の経験という意味でも「勝利経験」に優るものはない。ほとんどの選手が夢見る欧州トップリーグでの活躍も、勝ってこそ見えてくる。手倉森監督は自分の預かるチームについて「もはや谷間(の世代)では一切ない」と言い切った。アジアの戦いでひとつ化けた世代が、世界での“最終舞台”で大化けを遂げてメダルを手にする――。ここから4カ月の準備で、“リオ五輪日本代表”は、それを夢物語ではない、現実的な目標に変えていく必要があるし、「可能性」は確実に存在する。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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