初志貫徹した日本、武器を捨てた韓国 決勝で見えた非伝統的なコントラスト

川端暁彦

日本が逆転勝利でアジアチャンピオンに

決勝で韓国を下し、日本がアジアチャンピオンに輝いた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 コインの裏表がひっくり返っているような感覚は、決勝以前の大会中から感じていたものだった。片方は技術的に優れたMFを多くそろえ、中盤でボールをつなぐ意識が高い一方で、やや淡泊な対応で勝負強さを欠いて体力的にも不足が感じられるチーム。もう片方はシンプルに裏を狙う攻撃が特長である一方で、ボールをつなげる時間帯は限定されており、しかし粘り強さと持久力に優れており、終盤には滅法強い。対極にあるようなスタイルが激突するのは伝統どおりなのだが、しかし前者が韓国で後者が日本となると、非伝統的なコントラストを感じざるを得なかった。

 1月30日(現地時間)に行われたAFC・U−23選手権決勝。リオ五輪最終予選を兼ねる同大会は、上位3チームに出場権が与えられるレギュレーションだけに、決勝は盛り上がりを欠く可能性もあった。ただ、そのカードが日韓戦となれば話は変わってくる。互いに強く持つ両国のライバル意識は特別なもの。「日本国内では祝賀ムードもありますけれど、勝つか負けるかでそれも一変する」(手倉森誠監督)というファイナルとなった。結果は、2点を追いかける日本が後半の14分間で3ゴールを決め、逆転勝利でアジアチャンピオンに輝いた。

 韓国は国内で「最弱」などと揶揄(やゆ)される世代だったのだが、日本人の感覚からすると、評価自体に「?」をつけざるを得ないチームだった。MF中島翔哉が「韓国はうまくて、本当に流れに乗れなかった」と率直に振り返り、DF岩波拓也が「想像以上に韓国はうまかった」と認めたように、韓国の中盤には技術的に優れた選手がそろっており、日本側はボールの奪いどころを終盤まで見いだせなかった。

想定外だった失点

後半2分に2失点目を喫した日本。最悪としか言いようのない流れだった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 日韓両国共に今大会は先行逃げ切りのゲーム運びで勝ち残ってきたが、内実は対照的。早めに点を取っていく韓国に対して、日本は前半を慎重に運んで後半勝負というスタイルだった。「前半を0−0でいければ、2−0で勝てる」と手倉森監督が見込んでいたのもよく分かる。その意味で言えば、決勝で前半から韓国に押し込まれたことも想定内ではあった。ただ、「中盤にボールが入ったときに相手のプレッシャーに引っかかってしまう場面が多かった」(MF遠藤航)中で、あっさり失点してしまったのは想定外だった。

 前半20分、サイドチェンジから右サイドを破られた日本は、クロスボールへの対応を誤ってMFクォン・チャンフンにゴールを許してしまう。その後も「捕まえ切れないで自由にやらせていた」(MF矢島慎也)中で、相手に振り回されるシーンが目立つ流れとなる。極めつきは後半開始から日本が4−4−2から4−3−3へシステムを変更した直後に喫した2失点目だろう。日本の左サイドは完全に崩され、センターバックが釣り出される流れの中からFWチン・ソンウにネットを揺らされて、0−2。最悪としか言いようのない流れだった。

 手倉森監督は「2点目を取らせたのは俺が悪かった」と素直に認める。「本当は5分くらい様子を見てから(選手交代)とも思ったが、キックオフからした分だけ重心が後ろに下がってしまった」と猛省する。ボランチを3枚にして相手の攻勢をまず防ぐつもりだったが、後ろ向きな気持ちでスタートしたことで、相手の勢いをまともに受けてしまったのだ。そこからの時間は、まさに「チンチンにされた」(手倉森監督)というしかないもので、岩波も「正直、パニックになっていた」と認めるしかなかった。

 しかし、韓国側に3点目は生まれぬまま、時計の針は進む。日本の指揮官は「あれだけ外してくれると、『こっちに(流れが)来るな』という思いもありながらやっていましたし、負ける気はしなかった」という奇妙な手ごたえも感じていた。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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