本田圭佑が目指す新たな育成型クラブ 「ソルティーロFC」の実態に迫る 前編
ソルティーロFCとは?
真新しいグラウンドの上を、ゆっくりとランニングするソルティーロFCユースの選手たち 【スポーツナビ】
立派なクラブハウスのすぐ横にある真新しい人工芝の上を、選手たちがゆっくりとランニングで周回している。その様子ははたから見れば欧州トップレベルのユースチームに見間違える雰囲気を醸し出している。グラウンドの中央から選手たちを見守っているのは監督の須藤右介。名古屋グランパスに本田圭佑と同期で加入し、その後、横浜FC、松本山雅FC、サルゲイロ、トンベンセ(共にブラジル)、FC岐阜を経て昨年SC相模原で現役を退いた経験豊富な元プレーヤーだ。
その横には、2004年から3シーズンにわたり名古屋に在籍した元日本代表の秋田豊がスーパーバイザーとして鋭い眼光を光らせている。この豪華なスタッフ陣と設備を要するソルティーロFCユースは、日本代表の本田が所属する「HONDA ESTILOグループ」が運営し、今年4月に始動したばかりのユースチームだ。
選手たちの顔ぶれは新高1が17名、新高2が1名、新高3が1名の総勢19名。今後1年ごとにセレクションを行い、少しずつ人数を増やしていく計画だという。北は北海道、南は香川や岡山など、日本全国から「本田圭佑のチームでやりたい」と情熱を持った選手たちが集まってきてはいるものの、トップレベルの選手が集まってくるかと言えばそう甘くもない。通信制の高校とも連携をとるなどチーム周辺の環境整備に力こそ入れているが、まずは実績を作り、少しずつレベルアップを図っていくことが当面は求められている。
本稿では、このベールに包まれた“本田圭佑の哲学を持ったチーム”ソルティーロFCの実態と、クラブが目指しているその高い頂は何なのか、2回に分けてご紹介したい。
本田の考えとマッチした秋田
現役を引退したばかりの須藤監督(右)と、スーパーバイザーとしてチームを支える秋田(中央) 【スポーツナビ】
「電話がかかってきて、監督をやってくれと言われたけれど、いや監督はできないと言った。でも、こういうふうに携わることは可能だよということで、スーパーバイザーとして関わらせてもらうことになった」
週に3回程度グラウンドに顔を出し、選手へのコーチングや、須藤監督のサポートを主に行っている秋田。選手育成の考え方に対して本田と共感する部分があったゆえに、チームへの協力を決心したと話す。
「本田がイメージしているのは、世界で通用するような選手を育てたいという意志だった。日本って今はどちらかというと攻撃ならポゼッションだけとか、何か偏ったサッカーになってしまっている部分がある。もちろんポゼッションも大事なんだけれども、常に何を求めているのかが重要。ゴールを目指すためのポゼッションであり、攻撃するためのボールを奪うという行為であり、そういう基準を整理することで選手は良い判断ができると思う。そういう僕の思いと、本田がイメージしていることがマッチした」
世界で通用する選手の育成という高い目標を明確に持ち、選手としての考え方や具体的なプレーの向上を若い年代から指導していく。プロクラブを頂点に、下部組織からトップチームへ選手を押し上げていく考え方を、本田は幕張の地で実現しようとしているのだ。
「戦術のところも本田のイメージというのは理解しているつもり。まだこれからなので具体的に話すことはできないですけれど、多分他のチームではあまりやらないことをやりたいというイメージがあります」(秋田)
いくら本田が実質的オーナーのクラブチームとはいえ、“新参者”の戦いは千葉県4部リーグから始まる。千葉県内にひしめき合う強豪チームの「Cチームリーグのような感じ」(須藤監督)となり、各チーム低学年の選手たちが出場することが予想されるカテゴリーである。新高1が過半数を占めるとはいえ、「世界で通用する選手育成」を掲げるチームにとっては、確実に結果を残しステップアップしていきたいカテゴリーである。