本田圭佑が目指す新たな育成型クラブ 「ソルティーロFC」の実態に迫る 前編

スポーツナビ

個性が目立つメンバー構成

個性が目立つメンバーがそろっており、須藤監督も「長所を生かしてあげることができたら」と話す 【スポーツナビ】

 ではソルティーロFCユース一期生たちは、どのような選手たちが集められたのだろうか?

「本田も求めているような情熱的に熱く戦える子、あと技術の部分ですね。止める、蹴るがしっかりできる子たちを集めています」と答えてくれたのは須藤監督。そもそもゾゾパークができると決まったのも昨年中ごろだったため、選手のセレクションをするタイミングが少し遅れてしまった。つまり、有望選手に対するアプローチで他のクラブよりも一歩遅れをとった状況から本格的なチーム作りがスタートしたのである。

「その中で、原石は持っているけれどまだ発揮できていない子たちがたくさんセレクションに来ていた。中でも、長所を生かしてあげることができたらもっと大きくなるし、プロに近づけることができるかもしれない子は誰か、という視点で見ていました」

 練習を眺めていると、確かにプレーそのものはまだまだ荒削りな選手が目立つ。パス交換一つとっても、ミスを犯して受け手がボールを遠くまで拾いに行くシーンもしばしば。しかしそれぞれの個性が目立つ。ロシア人の母を持つというハーフの広岡賢は、高校1年生ながら180センチと長身。「どこにいっても諦めないという気持ちは大切」と向上心や我慢強さも光るだけに、しっかりとした技術やスタミナが備われば化ける可能性も十分に感じられた。他にも、左足だけは際立って技術が高い選手や、ハイボールに対するヘディングが非常に力強くセンスを感じる選手、スタミナが非常に豊富で他のメンバーの追随をまったく許さない選手、瞬発力が際立つ選手など、見ていて面白い選手が目についた。

長所を伸ばす須藤の育成方針

 今でこそ日本代表の中心的存在になった本田だが、ガンバ大阪ジュニアユースからユースチームへ昇格できなかったことを皮切りに、幾度となく挫折を経験してきた。その度に自身のウイークポイントを最低限のレベルにまで引き上げ、自身の長所であるボールの扱いやゴールに直結するプレーを前面に押し出してステップアップを繰り返してきている。CSKAモスクワでスタミナ不足を指摘されていた2012−13シーズン。シーズンが終わると、アフリカから09年東京マラソンの覇者サリム・キプサングら2人のケニア人ランナーを呼び寄せ「走り」を磨いた極秘合宿も記憶に新しい。

 ウイークポイントをつぶし、ストロングポイントを強く打ち出す。この考え方は、須藤監督も本田と似たような感覚を持ち合わせている。

「僕は高校生のときに都並(敏史)さんに『ウイーク(ポイント)を出すな』ということを言われました。そういうことが起きない状況を作れ、ウイークになりそうなところは関わるなと。自分はそれが得意じゃないんだったら横に味方がいたらその選手を使えばいいし、逆に横に味方がいても縦に勝負できるんだったら、それが得意なプレーならするべき。

 本田選手が今やっていることはプロとして使える選手になるための行動であって、このチームはその前の段階。まずは自分のストロング(ポイント)を見つけることと、ウイークの部分をどこまで持っていけるか。そしてプロに上がったときにそれをあまり出さないようにすることが大事だと、僕は今まで選手をやってきて思います」

 選手たちも自分たちの現在地を認識しているようだ。日本クラブユースサッカー選手権U−15に東京都代表として出場した実績のある、強豪S.T.FCから加入した松浦希龍も、「みんな自分たちはあんまりうまくないと認識している。須藤監督や秋田さんの指導で支えてもらって、全員で切磋琢磨(せっさたくま)してレベルアップしていきたい」と謙虚な発言をしていた。今後、選手たちがどのように“ソルティーロカラー”に染まっていくのか。チームの結果とともに注視していきたい部分である。

 後編では、ソルティーロFCが目指すもう一つの目的に迫りつつ、指導者実績のない須藤がなぜこの重要なポジションに任命されたのか? 本田と須藤が過ごしていた濃密な時間と、その後の関係についてもご紹介したい。

<後編につづく。文中敬称略>

(取材・文:澤田和輝/スポーツナビ)

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