好調ヘルタを支える原口元気 価値ある経験を重ね、チームを次の舞台へ
ベルリンっ子が目を向けだしたヘルタ
前半戦を3位で折り返したヘルタの頑張りに、ベルリンの人たちも感銘を受けてきたようだ 【Getty Images】
ブンデスリーガの観客動員数が世界一というのは周知の事実だろう。今季もダントツ1位のボルシア・ドルトムント(平均8万873人、以下同)や次いで2位のバイエルン・ミュンヘン(7万5007人)、3位のシャルケ(6万1056人)といったクラブは、ほぼすべての試合でチケットが完売という並外れた集客力がある。
そんな常に満員のスタジアムでプレーができるクラブと比べ、日本代表の原口元気が所属するヘルタ・ベルリンは今季まだ1度しかスタジアムが満員になっていない。ホームのベルリン・オリンピアシュタディオンの収容人員は7万4475人とドイツでも有数のキャパシティーを誇るが、今季ワーストの18節アウグスブルク戦の3万5196人をはじめ、4万人に満たなかった試合が全部で4試合。ドイツの首都ベルリンには他の都市以上にさまざまな娯楽の選択肢がある。一部の熱狂的なファンを除き、それでもあえてヘルタ・ベルリンの試合を見に行くには、バイエルンやドルトムントのような魅力的な対戦相手という付加価値が必要とされていた。
だが、前半戦を3位で折り返した勢いこそ少し陰りが見えてきたものの、後半戦に入ってもCL出場圏を死守し続けるヘルタの頑張りに、ベルリンの人たちも感銘を受け始めたようだ。4月8日に行われたハノーファー戦では4万5229人のファンが訪れた。一般的に客足の良くない金曜日のナイトゲーム、しかも最下位チーム相手という条件下で、これだけのファンがヘルタの試合に足を運んだのだ。ベルリンっ子の興味も高まってきている。
原口に求められているプレーとは
ハノーファー戦でスタメンフル出場した原口(左)。後半に入ってから動きの質と量が上がった 【Getty Images】
この試合で左サイドハーフとしてスタメンフル出場を果たした原口の動きは悪くはなかったが、前半はボールに絡むシーンが多くなく、うまく試合に入っていない印象を受けた。試合後のミックスゾーンではじっくりと言葉を選びながら、「前半から後半のように走らなければいけなかった。ハーフタイムに監督にすごく怒られました。どの試合でも走って戦わないと」と振り返っていた。
その言葉通り、後半に入ると動きの質と量が上がった。自分のやるべきプレーを見つめなおし、足を止めることなく、常に次の動きを想定してピッチを躍動する。そんな原口の良さが集約されたシーンがあった。51分、ピッチ中央でヘルタのベダド・イビセビッチとハノーファーのサリフ・サネがヘディングで競り合いボールがこぼれると、ためらうことなくダッシュを開始。先にボールに追いついていたはずのハノーファーMFウフェ・ベックからボールを奪いとり、そこから味方にパスをするとすぐにまた前線へと駆け出した。そして右サイドを経由して上げられたセンタリングが左サイドに流れてきたのだが、そのボールを拾ったのが原口だった。途切れるはずだった攻撃をつなぎ直す。こうしたプレーがチームにもたらすものは非常に大きい。
この時のプレーについて聞いてみると、「あそこですね、まさにあのプレーなんで。そういうプレーをしなければいけないと思う」とうなずきながら答えてくれたが、監督のパル・ダルダイが求めているのもまさにこうしたプレーなのだろう。守るだけの選手なら他にもいる。攻めるだけの選手も他にもいる。しかしダルダイは「ゲンキはどんなところからでもペナルティーエリアに入り込んでくることができる」と、運動量と守備への貢献に加え、チームでも1、2を争うスピードで何度でも攻撃に厚みを加えてくれる点を非常に高く評価している。だからこそ、ヨーロッパという舞台を目指すチームにおいて、原口はもはや欠かせない戦力へとなっているのだ。