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好調ヘルタを支える原口元気
価値ある経験を重ね、チームを次の舞台へ

武器を発揮するまでに大事なプロセス

「もう一回見つめ直して、チームのためにやりたい」と話す原口
「もう一回見つめ直して、チームのためにやりたい」と話す原口【Getty Images】

 もちろん第29節終了時で2ゴール4アシストという数字は攻撃的な選手として決して満足できるものではない。そのことは本人が一番よく分かっている。次のステップに行くためには得点に直結するプレーの精度が必要になる。だが、そのために何をしなければならないかを見誤らない目を持っていることが重要だ。


 ハノーファー戦の前半に走れなかった理由について、少し踏み込んで尋ねさせてもらった。


 「ちょっと変な余裕じゃないですけれど、より攻撃に力を入れたいという思いがあった。ちょっとはき違えていたなと思いますね。自分はやっぱり全部やって、なおかつ走っていることで評価されてきた。それを『ここはいいだろう』と思うようになってくると良くない。もう一回見つめ直して、チームのためにやりたいですね」 


 この言葉にこそ、彼の成長の秘密が隠されていると感じ入った。「結果がほしい」「結果を出さないといけない」というコメントは攻撃的な選手ならば誰もが口にするだろう。まして欧州では時に、こっけいなまでな結果優先主義が横行することもある。だが、求める結果を手にするためには、そこに至るプロセスをないがしろにしてはならず、そこがぶれてしまうとたどり着けないものなのだ。


 自分の特徴や武器とは、それだけをやろうとしても最大限には発揮されない。特徴や武器を生かすためには、チームのサイクルに関与できなければならず、そうしたベースをきっちりとこなした上で、どのように特徴や武器を使いこなすのかを試行錯誤しながら、経験を積み重ねていくことが大切だ。

ヘルタが迎える正念場

 第27節インゴルシュタット戦(2−1)では左サイドバックのマルビン・プラッテンハルトからの低空クロスをダイレクトで合わせる見事なゴールを決めた。「『このゴールはこれまで自分が決めてきたのとは全く違う。ドリブルからのシュートではなくて、センタリングをダイレクトに合わせたもの』と喜んだ」と『ビルト』紙にコメントが紹介されていたが、このゴールも原口が何度もチャレンジしてきたからこそ生まれたものだ。


 例えば、第26節シャルケ戦(2−0)の前半にこんなシーンがあった。左サイドのサロモン・カルーにボールが渡ったとき、右サイドにいた原口はスピードをあえて緩めて「間」を作った。次の瞬間カルーは切り替えして中に持ち込み、相手DFの間に生まれたスペースにパスを送ると、原口はこのタイミングを狙ってエリア内に猛進。結局ボールはその手前で同じくフリーだったブラディミル・ダリダがトラップし、シュートに持ち込んだが、味方の次のプレーを読んだ、とても頭脳的な動き出しだった。


 サッカーには「たら」「れば」がつきものだ。だから「どんまい!」「次! 次!」と切り替えることも大切ではある。しかし、何もかもを水に流してしまったら経験として残らなくなってしまう。だからひとつひとつのプレーの意味を知らなければならない。フリーのシーンでボールがもらえなくても、そこに行くことが重要だと分かっていれば、何度でも行き続けることが大切なのだ。経験は足し算・引き算して最適な状態に持っていくことで価値を持つ。そうした能力を原口はしっかりと身につけている。


 今節勝利したレバークーゼンが勝ち点1差の4位に肉薄してきている。そのレバークーゼンやバイエルンとの対戦も残すヘルタはここが正念場だろう。次節ホッフェンハイム戦ではなんとか勝利をもぎとりたいところだ。ドイツカップ準決勝のドルトムント戦はすでにチケットが完売し、あと5試合残すリーグにも多くのベルリンっ子が駆け付ける。彼らを熱狂させ、そしてチームが欧州の舞台へたどり着くためには、原口の貢献が欠かせない。

中野吉之伴
1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで経験を積みながら、2009年7月にドイツサッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU15チームで研修を積み、016/17シーズンからドイツU15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

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