【シュートボクシング】宍戸大樹、引退試合に敗れるもファンに感謝

長谷川亮

引退試合に敗れた宍戸大樹だったが、完全燃焼でファンに感謝 【中原義史】

 シュートボクシング「SHOOT BOXING2016 act.2」が3日、東京・後楽園ホールで開催された。
 メインイベントはキャリア18年、長くシュートボクシングのエースを務めてきた宍戸大樹の引退試合。昨年9月、東洋太平洋ウェルター級王座の防衛戦で延長判定で退けたジャオウェハー・シーリーラックジムと、5R・ヒジありルールでの再戦に臨んだ。

 宍戸戦の敗戦後、ジムを移籍したジャオウェハーは3連勝。得意のヒジを振るってムエタイの国際大会「MAXムエタイ」でスーパーライト級王者に輝いており、持つ武器を全開にして宍戸にリベンジを挑んだ。

試合開始前から会場は大「宍戸」コール

大「宍戸」コールを受け好調な出足の宍戸だったが 【中原義史】

 会場は開始前から大「宍戸」コールで、激励賞の読み上げも異例の数となり、宍戸は長く祈るように集中してから試合へ入る。

 1R、宍戸は大きく左回りして左ミドル、右ロー、前蹴り、横蹴りと持ち味である蹴りをどんどん繰り出していく。そしてジャオウェハーの意識が散らすと、左ジャブも突き刺す。バックブローも放ち好調な出足の宍戸だったが、ジャオウェハーは攻撃をディフェンス、あるいは食らいながらも前に出て、右・左とヒジを強打。腕を伸ばしてこのヒジを防御する宍戸だが、ヒジと腕が激しくぶつかり、リングサイドには鈍い音が響く。

 2R、宍戸は左手でのバックブローの後、今度は右足でのバックスピンキックと左右両方向からの回転技を見せ(バックスピンキックはボディと顔面に蹴り分け)、縦ヒジを繰り出すと、これで先にジャオウェハーをカットする。

【中原義史】

 しかしジャオウェハーは得意のヒジでカットされたことで火が付いたか、逆に右ヒジで額を切り裂き宍戸を大流血に追い込む。出血の止まらない宍戸はドクターストップを懸念したか早期決着を狙いヒジでの打ち合いに臨むが、ジャオウェハーはここでも右ヒジでの強打で上回り、宍戸は左手でブロックしながらの応戦で劣勢となる。

大流血に追い込まれるも最後まで戦う姿勢は失わず 【中原義史】

 3R、宍戸はジャオウェハーの頭部を引き落としてフロントチョークでとらえて絞め上げるが、これは強引に横へ投げるようにして逃げられる。そしてジャオウェハーがさらに右ヒジを振るうと、これを直撃された宍戸は顔をしかめて崩れ落ち、レフェリーは試合をストップ(3R1分14秒 TKO)。現役最後の試合を勝利で飾ることはできなかった。

シーザー会長「19年間彼を教えてよかった」

師匠のシーザー武志会長は「19年間彼を教えてよかったなと思います」と労いの言葉 【中原義史】

 しかし応急処置を受け立ち上がった宍戸はジャオウェハーの手を挙げて称え、ジャオウェハーも宍戸の長き戦いを労うようにその体を抱え上げる。その後行われた引退セレモニーでは、石井宏樹、米田貴志、山内佑太郎、山本元気、増田博正、菅原勇介、歌川暁文、桜井洋平、宮越宗一郎と交流のある選手・関係者が集い、宍戸を見送る。

 宍戸はジムで指導する子どもたち、3人の愛娘たちと記念撮影を行い、師であるシーザー武志会長からは「男の引き際はこういう風に散るんだなと思いました。去る時の美しさ。負けたかもしれませんが、最後まで戦い抜いた勇気を見て、19年間彼を教えてよかったなと思います。彼はこれからも頑張りますので、ぜひ応援してやってください」と言葉を贈られる。

悔しさ寂しさ、それ以上の喜びも全てSBで学んだ

大勢のファン、仲間が見守る中、10カウント聞きリングを後に 【中原義史】

 最後にマイクを持った宍戸は「終わってみて本当にみなさんに感謝の言葉しかありません。20歳から東京に出てきて、会長に面倒を見てもらって、続けてきて本当によかったと思います。悔しい思いや寂しい思い、それ以上の大きな喜びも全てシュートボクシングで学びました。人生の半分近くをシュートボクシングという格闘技で過ごしてきましたが、やっていなかったらどうなっていたかと思います。今後は恩返しをして、後輩たちに道を作っていきたいと思います。元気が出た、見てよかったという大会、選手を育てていくことが今後の目標です。こんな自分に20年近く付き合っていただきまして、ありがとうございました」とあいさつ。

 そしてアマチュアから19年、82戦58勝(24KO)24敗となったプロでの戦いを終えると、真っすぐ前を見て10カウントを聞き、リングを後にした。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント