初めての代表招集で際が感じた“差” ポルトガル合宿で出た課題は「宝物」

中田徹

代表で感じた自分のレベル

際(左から4人目)は初めての代表で差を感じたものの、「努力して頑張れば埋まる」とコメント 【写真は共同】

 ヘルモント戦では、センターサークル内で懐の深いタックルから力強く相手ボールを奪い取っていた。国際試合の経験を、そのままオランダリーグに持ち帰ってきたプレーだった。

「それはあると思います。これからはそこを基準にしないとやっていけないと思いました。ましてや、自分はオランダの2部リーグなので。オランダにも体の大きい相手はいますが、ドイツやイタリアにはもっと筋力を持った選手がいる。もっと自分もバチバチ行かないと、他の国と試合をした時、面食らってしまう。いかに連続してプレッシャーをかけられるか。ちゃんとそこでボールを取れるか。裏に出されても付いていけるか……そうしたベースの部分をもっと練習から集中してやっていきたい」

 これまで際は「年代別代表に入ったことがないので、自分のレベルを図る物差しがない」と言っていた。今回、その物差しができたのではないだろうか。

「その“物差し”は、すごく変な感じでした。できるんですけれど……。あのレベルには自分はいけるな、という実感はすっごくあるんですよ。だけど、意外と差があるんだなというのもあって、すごく変な感覚でした」

 今までのサッカー人生でも差を感じ、それを詰めることによってステップアップしてきた際だが、それとは違う“差”ということなのだろうか。

「今までの差は、かなり圧倒される差。ある意味、メンタルがへし折れるような差。オランダに来た時がそう。ドルトレヒトで最初、へし折られました。体、スピード、技術だったり。今回の代表ではめちゃくちゃ差があるというより、努力して頑張れば埋まる差だなという感覚ですね。

 僕は試合終わってすぐ監督のところへ聞きにいくタイプではなく、自分の中でいったん整理をして、というタイプ。その整理を終えて、チュウさん(中馬健太郎、U−23日本代表コンディショニングコーチ)と話をして、それこそさっき言った、裏へ蹴られた時の体を反転してからのスピードの練習や、体力面だったり、そういったトレーニングの話を1時間以上していました。合宿中、僕は練習ができなかったですが、課題を思いついたらすぐチュウさんのところへ行って、『ここを修正するには身体的に神経を通す方ですが、それとも力ですか』ということなどを聞いて、そのためにはどういうトレーニングをするか教えてもらったので、自分の中では今後どういったメニューをこなしていくのか整理がつきました」

「手倉森監督にもっと教えてもらいたい」

 一方、ドルトレヒトは昨季1部リーグでプレーしていたのがうそのように調子が下がり、今は19チーム中17位だ。

「ちょっとでも高いレベルでサッカーをしたいので、できれば(1部昇格を懸けた)プレーオフに出たかったんですけれど、いかんせんチームの雰囲気があまりに悪い。でも、僕はそれに巻き込まれないようにして、試合の中でどんどん違いを見せつけないといけない。もっとチームメートに差を付けて、良い刺激を与えていければ、チームを変えられるので、僕は前を向いていくだけ。絶対に落ち込まないようにしないといけない。僕には課題がありすぎるので……」

 続けて際は、課題に対する持論を語った。

「課題は宝物です。今回僕にとって大きな宝箱を得た感じがします。宝箱の中身の価値を決めるのは本人。課題の価値を決めるのも本人。今回、U−23日本代表で出た課題に対して取り組む僕の“熱”は高い。今回の苦い経験がエネルギーになって、課題に対して取り組める。ポルトガル合宿に関しては、大きな宝箱を持って帰ってこられたと思っています。すごく充実していました」

 逆に、これは通用すると感じたことはなんだろうか。

「うーん。もっと全部上げたいという欲の方が僕は大きい。今回メキシコが相手でしたが、他の国になったら違うサッカーになるから、もっと全部を上げていかないといけない。課題に対して取り組んで、より自分の理想に近づきたい。理想に近づくということは、サッカーが楽しくなるということ。苦しいところから楽しいところへいって、そこで苦い経験をして、またサッカーを楽しみたいからその課題に取り組むというのが僕の中にある。今回の合宿ではマイナス面が目についた。逆に良い面は気にしないんですよね。マイナス面を治そうということになるので、結局、課題が収穫になってしまう」

 久保裕也(ヤングボーイズ/スイス)、南野拓実(レッドブル・ザルツブルク/オーストリア)の話を聞き、さらにドルトレヒトに戻ってきて「僕ももっと高いレベルのところに身を置きたいと思いました」と際は言う。オランダ2部リーグは4月29日までで、あと4試合を残すのみ。

「チームは厳しい状況ですが、僕のモチベーションはかなり高い。手倉森監督にもっと教えてもらいたい。4月29日までドルトレヒトで頑張って、トゥーロン(国際大会)を目指したいです」

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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