柏が目指す去年と今年の良いところ取り 突然のメンデス監督辞任も余波はない

鈴木潤

選手が感じた課題と監督の方向性が一致

下平監督は「去年と今年の良いところ取りをして融合させていきたい」と方針を語った 【写真:アフロスポーツ】

 メンデス監督辞任翌日の13日、下平監督は順天堂大との練習試合前のミーティングにて、磐田戦に出場した選手と練習試合に出場する選手の前で次のように自身の方針を明らかにした。

「基本的にはアカデミーの(パスをつなぐ)サッカーをやっていきたい。ただ、メンデス監督のアグレッシブな良い部分は間近で見て分かっているから、去年と今年の良いところ取りをして融合させていきたい」

 今週の練習でも、ボードを使用しながら綿密に戦術指導を行ってきた下平監督。明言通り、昨年同様ボールを大事にする練習メニューが増えたが、攻守両面でメンデスサッカーの強度も残している。スピーディーなサッカーだけに傾倒していくのか、それとも今後ポゼッション要素も入ってくるのかと、メンデス監督の不透明だった状況から、下平監督の打ち出した方針と練習内容によって方向性がクリアになり、「靄(もや)が晴れた」(栗澤)という。つまり、昨年のポゼッションは継続しながらも、それだけでは勝てないことを露呈した昨季の反省を踏まえ、どうやって攻撃にパワーを出すか、または守備に強度を持たせるか。昨季に選手が感じていた改善点と、下平監督の方向性が一致したのだ。

必要なのはとにかく勝利

下平監督の初陣は吉田前監督の率いる新潟。必要なのはとにかく勝利だ 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 下平監督は、U−18の監督を務めていた頃から、細部でアカデミースタイルのマイナーチェンジを施していた。ユース年代では、ポゼッションでほとんどの対戦相手を上回ることができる柏U−18に、迫力ある縦への攻撃意識を植え付けるために、あえて引き気味の陣形を取って相手の背後のスペースをスピーディーに狙わせたこともあれば、守備においてもボールに対する強度の高いアプローチを常々求めていた。こうした手腕を見ていても、下平監督はメンデス監督体制を挟んでいなかったとしても、アカデミースタイルをそっくりそのままトップチームに移植させるのではなく、昨年1年間で柏が露呈した課題も相まって、細部でのマイナーチェンジを施したに違いない。

 しかし、急な監督交代により、準備期間がないのは確かである。ましてや、ここまで1分け2敗と結果も出ていない状況だ。このタイミングで下平監督体制の初戦(19日のJ1 1stステージ第4節)が、昨季まで柏を率い、アカデミーの礎を作り上げた吉田監督の新潟という点も、不思議な巡り合わせである。

 ただ、下平レイソルに必要なのは、「同じ哲学を持つチーム同士の対戦」だとか、「手の内を知り尽くした吉田監督にどう挑むか」などというドラマ性ではなく、とにかく白星である。そして勝利を挙げてこそ、本当の意味でメンデス監督辞任の余波がなかったと言い切ることができる。

2/2ページ

著者プロフィール

1972年生まれ、千葉県出身。会社員を経て02年にフリーランスへ転身。03年から柏レイソルの取材を始め、現在はクラブ公式の刊行物を執筆する傍ら、各サッカー媒体にも寄稿中。また、14年から自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信している。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント