なでしこを狂わせた勝利への焦り 技術を封じられ、中国のフィジカルに屈す

江橋よしのり

リオ行きの可能性はほぼゼロに

なでしこジャパンは中国に敗れ、リオ五輪出場が絶望的となった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 大阪で開催されている女子サッカーのリオデジャネイロ五輪アジア最終予選で、なでしこジャパンは3月4日の第3戦・中国戦に1−2で敗れた。3試合を終えて勝ち点は1と振るわず、リオ行きの可能性はほぼゼロになった。

 試合内容を振り返ってみる。なでしこジャパンは韓国戦で先発落ちした鮫島彩、阪口夢穂、中島依美の3人を再びスタートから起用。韓国戦で「古傷が心配なので大事を取らせた」(佐々木則夫監督)というのは、おそらく鮫島と阪口のことだろう。体調は万全とはいえないが、この日の勝利のためには彼女たちの力が必要だった。

 対する中国は、右サイドバックの5番ウー・ハイイエンが今大会初先発。左サイドハーフの12番・ワン・シュアンとFW20番ジャン・ルイが初戦以来の先発となった。中国は第2戦の北朝鮮戦でほとんどゲームを支配されたが、後半アディショナルタイムでPKを獲得して1−1の引き分け。勝ち点1を手に入れていた。日本対韓国と同時刻に行われていたこの試合を取材した同業者は「これで中国に勢いがつかなければいいけれど……」と、心配そうな口ぶりで話していた。

「勝たなければならない」なでしこの焦り

 試合が始まり、なでしこジャパンのフォーメーションを確認すると、大儀見優季と横山が前線で横に並ぶ2トップ、宮間はトップ下ではなく左サイドハーフに入った。韓国戦で相手DFラインの背後に走り込む動きが少なかったことを修正し、横山を飛び出させる狙いがあったようだ。実際、横山は序盤から積極的にスペースへと走り込んでボールを引き出し、チャンスを作っていた。

 自陣でのボール回しもまずまずだった。田中と熊谷紗希の両センターバックが横に広くポジションを取り、GK福元とMF阪口を前後に置いたひし形の陣形で相手のプレスを分散。近賀と鮫島を高い位置に上げて攻撃を組み立てていた。ところが14分、中国のスローインからボールを奪い返したなでしこは、川村のバックパスを田中が処理しきれず、中国に先制ゴールを許す。

 慌てず、落ち着いて試合に入れていたが、一瞬の隙から失点を喫したことで、「勝たなければならない」なでしこは、個々のプレーにわずかながら焦りが出始めた。34分には横山が良いタイミングで相手の裏を取ったが、ワンタッチ目がわずかに流れ、シュートは打てずじまい。その後の横山の飛び出しに対しては、中国もカバーリングで対処するようになった。

 後半に入ると、いきなり宮間のミドルシュートでなでしこが反撃の姿勢を見せる。だが、ゴールネットを揺らしたのはまたも中国だった。この日の中国の攻撃のキープレーヤーは、右サイドハーフのグー・ヤーシャだった。左サイドから攻め上がると、ペナルティーエリア付近でコースを変えて、逆サイドのグー・ヤーシャがシュート。中国は、この日何度か試みた形がようやく実り、後半13分に追加点を挙げた。

 なでしこはその7分後に横山のゴールで追い上げたものの、追加点は遠く、そのまま1−2で敗戦の笛を聞いた。

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著者プロフィール

江橋よしのり

ライター、女子サッカー解説者、FIFA女子Players of the year投票ジャーナリスト。主な著作に『世界一のあきらめない心』(小学館)、『サッカーなら、どんな障がいも越えられる』(講談社)、『伝記 人見絹枝』(学研)、シリーズ小説『イナズマイレブン』『猫ピッチャー』(いずれも小学館)など。構成者として『佐々木則夫 なでしこ力』『澤穂希 夢をかなえる。』『安藤梢 KOZUEメソッド』も手がける。

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