歴史的な一歩目を刻んだサンウルブズ 「エディージャパン」と違う戦術で勝負

斉藤健仁

堀江主将「FWのせいやと思っている」

ボールを持った選手が少しでも前に出ることが重要だと語るPR稲垣 【斉藤健仁】

 ただ、相手の激しいタックルを受けてFWがボールを前に運ぶことができないと、なかなか攻撃にリズムが出なかったのも確かだ。ハメットHCが、一番、チームに徹底しているのは「2mフォーカス」だという。ボールキャリアがしっかりと前に出ること、である。
 突破役として、今日の試合でも非凡な才を見せたPR稲垣は言う。「2m前に出られれば、相手のディフェンスも2m下がるし、前に出ながらのアタックとなる。SHの横に3人並ぶシェイプで(FWが)前に出ないとBKもリンクできない」

 田邉コーチも「(アタックは)まとまりはあったし、やりたいことはできていた」と一定の評価はしたものの、課題を口にすることを忘れなかった。「まだまだ精度に問題がある。もうちょっとボールを動かしたかった。トップリーグだと2人でボールがでるが、スーパーラグビーでは3人、4人が必要となっている。ひとつ目、ふたつ目のラックで人数をかけてしまうと、外の人数が減ってしまう」。また堀江主将が「セットプレーからのボールの球出しがよくなかった。FWのせいやと思っている」と言うように、セットプレーから効果的なアタックができていなかったことも、アタックを少々、難しくしたと言えよう。

ハメットHCはコンタクトの部分を高評価

パナソニックではFBだが、左WTBとして安定したプレーを見せた笹倉 【斉藤健仁】

 一方、元リコーのネイサン・メイジャーコーチが指導するディフェンスは、内側から押し上げていくシンプルなものだったが、一人目がしっかりと倒し切っている間は、機能していた。いずれにせよハメットHCが「今日のゲームを見て思ったが、スーパーラグビーのテンポ、速さには対応できると思います。コンタクトは素晴らしかったし、前にも進めていた。クリーンアウト(ラックで相手をどかすこと)も接点も負けていなかった。けれどもフィジカル面でもっとマッチングさせないといけないですし、そこを強化することも必要です」と言えば、「テンポが良ければ良い攻撃ができる」とSOピシが言うように、自信を深めた試合になった。

 初代主将に任命され、サンウルブズ初のトライを挙げた堀江は、試合後の会見でこう力強く言い切った。「選手は100%出したが、結果に結びつかなかった。少しずつ一歩一歩上がっていきたい。スクラムはもちろん、流れの中のタックル、アタックのシェイプも一人ひとりやることを明確にしたい」

次戦はシンガポールでチーターズ(南アフリカ)戦

国際色に富んだメンバーで歴史的初勝利を目指す 【斉藤健仁】

 新生サンウルブズは、2015年ワールドカップに出場した日本代表10人をベースにしたチームだが、アメリカ代表、サモア代表、アルゼンチン代表、フィジー7人制代表、オーストラリア人、NZ人もいる国際色に富んだメンバーで構成されている。どのスーパーラグビーよりもマルチカルチャーであり、今後の伸びシロも期待でき、ひたむきな姿に、より応援したくなったファンも多かったことだろう。

 そんなサンウルブズは一週間の休みを挟んで、3月12日にはシンガポールでチーターズ(南アフリカ)と対戦し、19日は東京でレベルズ(オーストラリア)と対戦する、まずは「一勝」し、チームに新たな歴史を刻んでほしい。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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