日本フットサル界が失った大きなもの 「経験不足」露呈でW杯出場を逃す
過去最低の結果で大会を終える
今大会は初めて全試合が日本国内で衛星放送されていた。結果を残すことで、ラグビーの日本代表のように盛り上がるのではないかという期待もあった。だが、3連勝したグループステージはともかく、準々決勝では格下のベトナムにPK戦(4−4、PK1−2)の末に敗れ、続く5位決定プレーオフ初戦ではキルギスにも2−6という大敗を喫した。
次のW杯予選を兼ねたアジア選手権が行われる4年後には、東京五輪が開催される。五輪競技が注目を集める中、人々はフットサルにどれだけ注目してくれるだろうか。逃した魚の大きさは、計り知れない。
とはいえ、結果が変わることはないのだから、同じ過ちを繰り返さないために、この経験から大いに学ばなければならない。今回の敗退には多くの要因が複雑に絡み合っており、単純に結論付けることは不可能だ。ここでは、その中の一つである「経験不足」について触れたい。
「うまく行き過ぎていた」日本の落とし穴
だからこそ、「うまく行き過ぎていた部分もあるのかもしれません」と、小曽戸允哉(シュライカー大阪)は振り返る。「コロンビアに大敗していたり、予選リーグで1試合引き分けたり、負けていたら、また違っていた日本代表になっていた可能性もあったと思います」と、言葉を続けた。
実際に、前回優勝したベトナム大会では、グループステージでウズベキスタンに1−2で敗れた。この敗戦を機に自分たちを見つめ直したチームは、ミゲル・ロドリゴ監督のやろうとするフットサルを一丸となって体現し、アジアの頂点へ上り詰めた。前回大会、前々回大会と2連覇を経験したチームの中心メンバーでもあった小曽戸は、「負けたら良かったということは絶対にないのですが、うまくいっていたことで見えなかったこともあったのかなと思います」と、肩を落とす。
うまくいっているとき、物事は簡単だ。その勢いで自分たちの持っているものを発揮できる。しかし、日本代表は試合終了間際に同点に追いつかれ、格下のベトナムにPK戦で敗れてしまった。続くキルギス戦は、「勝てなければW杯に行けない」というプレッシャーに加え、「アジア3連覇を逃した」という喪失感を持って戦わなければなかった。しかも、ベトナム戦の翌日にである。切り替える時間があれば、結果は違ったと断言できる。しかし、中には満足に睡眠をとれずに朝を迎えた選手もいた。一方のキルギスは、準々決勝の相手がアジア最強のイランだと分かったときから、すでに5位決定プレーオフでの戦いを思い描いていたはずだ。イランに0−7という大敗を喫しても、日本よりは気持ちを次につなげやすかっただろう。