「史上最強」のフットサル日本代表 W杯での8強進出に向けアジア制覇に挑む

河合拓

史上最強のチームに仕上がった日本代表

フットサル日本代表は12年、14年とアジア選手権を連覇しており、今大会は初の3連覇への期待も高まる 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 フットサル日本代表は、2月10日からウズベキスタンで開催されるAFCフットサル選手権(アジア選手権)に出場する。アジア選手権は2年に1度開催(2008年までは毎年開催)されるフットサルのアジアチャンピオンを決める大会であり、フットサルワールドカップ(W杯)が開催される年の大会は、その予選を兼ねている。今年は9月にコロンビアでフットサルW杯が開催されることになっており、今回のアジア選手権の上位5チームには、08年のブラジル大会以来2大会ぶりとなる南米開催のW杯への出場権が与えられる。

 日本代表は、UAEで開催された12年大会、ベトナムで開催された14年大会とフットサルアジア選手権を連覇しており、今大会では初の3連覇を目指す。その目標達成に向けて、史上最強のチームに仕上がっている。

 このチームの特徴は、ボールを持っているとき=攻めているとき、ボールを持たれているとき=守っているときを問わず、自分たちから仕掛けることができるという点にある。09年に日本代表の監督に就任したスペイン人のミゲル・ロドリゴは、祖国から持ち込んだ世界最先端の戦術を日本人の特徴に合わせてアレンジし、それを選手たちに伝えた。

 まずはベースとなる攻撃の動きを植え付け、そこからフルコート、ハーフコートからのプレッシング、自陣に引いて守る形と守備のパターンを作った。さらにパワープレーやセットプレーといった特殊な戦い方に磨きをかけつつ、自身のコネクションを最大限に活用し、スペインのプロクラブとの親善試合を行って速攻の切れ味や選手個々の能力を高めていった。

 その成果が表れたのが、横浜FCに所属するFW三浦知良も招集された12年のフットサルW杯タイ大会である。初戦こそ、同大会でW杯連覇を達成することになるブラジルに敗れた(1−4)が、その後強豪ポルトガルと5−5で引き分けると、グループリーグ最終戦でリビアに勝利(4−2)し、史上初の決勝トーナメント進出という目標を達成した。

 タイでのW杯終了後、ミゲル監督は世代交代に乗り出し、4年後のW杯コロンビア大会に向けたチーム作りをスタートした。最初の3年間で作ったベースを元に、より個人能力が高い若手選手たちの「突破力」を生かすスタイルへ変化させていった。その結果として、自分がボールを持っている時にもドリブルで仕掛けられ、反対に相手がボールを持っている時にはミスを誘発させるような、激しいプレッシングを仕掛けられるチームに仕上がった。

前回大会の雪辱に燃えるエース森岡薫

エースの森岡薫、14年のアジア選手権は負傷のため、出場時間が限られていただけに今大会に懸ける思いは強い 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 このチームのエースは、07年に開幕したFリーグ(日本フットサルリーグ)の初代MVPであり、その後も数々の個人タイトルを獲得し続けているFP森岡薫(名古屋オーシャンズ)である。金髪がトレードマークとなっている「ミスターFリーグ」は、ペルー出身の日系3世。12年に帰化が認められると、カズとともに日本代表に初招集され、タイW杯に出場した。森岡は36歳となった今も成長を続けている。15−16シーズンは、シーズン中に左足関節遊離体除去の手術に踏み切ったため、FリーグMVP、得点王の個人タイトル獲得は逃したが、名古屋をリーグ9連覇に導き、チームでただ1人、リーグのベスト5に選出されている。

 今大会、誰よりも強く「チームに貢献したい」と思っているのも森岡だろう。14年のベトナムで行われたアジア選手権にも出場した森岡だが、当時は負傷した状態であり、出場機会は限られていた。3−2で勝利した準々決勝のタイ戦で決勝ゴールを決めたものの、決勝戦のイラン戦では思うように足が動かず、自らの判断でベンチへ下がった。PK戦の末にイランを下して連覇を達成した直後も、金メダルをぶら下げながら、「優勝できたことは素直にうれしいけれど、『自分が貢献できた』と思える大会ではなかった」と、悔しさをのぞかせていた。今回こそは中心選手として、アジア選手権3連覇に貢献するという強い決意に燃えているのだ。

 森岡以外にも、現在の日本代表には多くのタレントがいる。ポルトガルの名門ベンフィカで中心選手として活躍しているFP逸見勝利ラファエルは、12年のUAEで行われたアジア選手権の大会MVPである。まだ23歳と若いが、幼少の頃からフットサルをプレーしており、戦術眼の高さ、ドリブルの切れ味、シュートの正確性は、世界でもトップクラスだ。

 また、逸見にも劣らない突破力を持つのが、FP仁部屋和弘(バサジィ大分)だ。左右両足を均等に使うことができ、その独特の間合いとリズムのドリブルで、世界トップレベルの選手たちも手玉にとってきた。前回のW杯は、カズが入ったことで直前にメンバー入りを逃したこともあり、初のW杯出場に向けて並々ならぬ闘志を燃やしている。他にも、世界最高峰のスペイン1部リーグで活躍しているFP吉川智貴(マグナ・グルペア/スペイン)、世界中で話題となったヒールリフトでの代表初ゴールを決めたFP室田祐希(エスポラーダ北海道)ら、個の能力が高い選手がそろっている。

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著者プロフィール

1980年、埼玉県生まれの転勤族。大学在学中の2002年にフットサル専門誌『Pivo!』で取材&雑誌編集を開始。06年からはベースボールマガジン社で『週刊サッカーマガジン』の編集に携わり、ガンバ大阪&セレッソ大阪の担当を務めた。11年にフリーランスに転身。15年からは大宮アルディージャ広報誌『VAMOS』や『サッカーゲームキング』の編集に携わる。

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