重力波のような重派コパノリッキー 「競馬巴投げ!第116回」1万円馬券勝負
口では嫌がっても体は正直じゃのう
[写真3]芝で重賞2勝のパッションダンス、2度目のダートでどう変わるか 【写真:乗峯栄一】
確かにアダルトビデオではお馴染みのこのセリフ、実際には一度も言ったことがない。
あ、でも自分一人のときは言ったことがある。
誰でも多感な青春時代にはこういうことがあったはずだ。夏の日、下宿の部屋で両手を頭の後ろに組んで寝っ転がっていると、ふとしたはずみで目の端に陰毛が見える。しかしよくよくチェックしてみると、それはTシャツの袖口から見える自分の脇毛だった。元来毛の薄い方なのでまだらにしか生えていないが、それがかえって卑猥さを増している。こんなに身近なところにこんなにイヤラシいものがあったのかとある種の感動すらおぼえる。しかし問題はここだ。「何だ、オレの脇毛か、つまらん」と言ってまた横になるか、「女の股ぐらがオレの脇の下に付いていると考えられなくもない」という建設的提案をするかで人生は大きく変わる。
[写真4]フェブラリーS3連覇を狙うコパノリッキー(昨年チャンピオンズC時撮影) 【写真:乗峯栄一】
でも、確かに女性に対しては言ったことがない。なぜだろう? 引っ込み思案な我が性格が悪いのか? でも大人の男のうち何%ぐらいが実際に言ったことがあるんだろう? また大人の女のうち何%ぐらいがこのセリフを言われたことがあって、さらにそのうちこの言葉で余計に燃え上がったというのは何%ぐらいなんだろう? 内閣府統計局は、愚にもつかない質問じゃなくて、こういう有意義な統計を取りなさい。
各家庭を回り「奥さんは“口では嫌がっても体は正直じゃのう”って言われたことがありますか? え、ある! でそのときは(1)悔しい (2)普通 (3)更に燃え上がった、この三つのうちのどれですか?」と聞いて回りなさい。ぼくの予想では◎(3)50%、○(2)30%、×(1)20%なんだけど。
アインシュタイン相対性理論が競馬予想を変革する
[写真5]アスカノロマンは年明けの東海Sが強い勝ちっぷりだった 【写真:乗峯栄一】
15年ほど前、大阪スポニチの新人研修に一度だけ呼ばれた。「何を話してもいい」と人事部長が言うので「着順判定速度が光速を越えれば百発百中の的中になる。どうやって判定速度を光速を越えさせるかが、これからの予想の最大テーマだ」という“究極競馬予想理論”を、模造紙に馬の雁行(がんこう)状態の絵と、アインシュタイン特殊相対論ローレンツ収縮の数式を書いて説明することにした。
先日、アメリカの科学者がアインシュタインの予言した重力波を観測したと言って話題になった。いずれノーベル賞を受賞するのかもしれない。しかし日本には「アインシュタイン相対性理論が競馬予想を変革する」と予言・実証した者がいる。そっちの方はどうしてちっとも話題にならないんだろう。
確かに途中から自分でも何を喋っているのか分からなくなり、シドロモドロになり「だからね、ここがね」と模造紙押さえて新入社員を振り返るたび一人、また一人と討ち死にしていくのが見える。それでも「要するに、これがね」と最後のまとめに入ろうとしたとき人事部長の首も垂れたのを確認する。
「こんな話でどうも」と泣きそうな声を出して模造紙を片付けに入った。「居眠りしてる、そこのキミ、立ちなさい、名前は何だ」と一生に一度でいいから、そんなことを言ってみたい。
[写真6]3年前のフェブラリーS勝ち馬グレープブランデー 【写真:乗峯栄一】
でも一日後「我が◎ゴールドシップ」はしっかり証明された。予想のヤジは一日で称賛に変わる。変わると思ったが、日曜に梅田WINS行ったって何にも変化はない。あの“アホかいな”オジサンだって「ヤジったオレが悪かった」などと反省してはいない、きっと。前日のことなんか、きれいさっぱりに忘れているんだろう。悔しい。
判定速度が光速を越えて「あの時の乗峯、いいこと言ってたなあ」と称賛される日はいつか来るだろうか。