笑顔で臨んだコービー最後のオールスター 若手の活躍で感じた世代交代の時間
大味な試合で次代を担う選手が躍動
試合ではMVPを獲得したウェストブルック(0番)ら次代を担う選手が躍動した 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
試合中、筆者の隣に陣取ったカナダのラジオ放送局は、“選手をよりやる気にさせるためのオールスター改革案”の議論を始める始末。この緊張感のなさは、ゲームが後半に入っても変わらぬままだった。最終的に合計得点、勝利チーム、敗北チームの得点のすべてで新記録という“歴史的”なゲームながら、大方のファンは試合結果のことなどすぐに忘れてしまうのではないか。
もっとも、そんなゲームの中でも、見るべきものがなかったわけではない。最大の収穫は、コービーやさらにその一つ後のレブロン・ジェームスの世代よりも先の、次代を担っていく選手たちが元気な姿を見せてくれたことだ。
ウェスタン・カンファレンスでは、ラッセル・ウェストブルックが31得点、8リバウンド、5アシスト、5スティールの大活躍でチームをけん引。2年連続となるMVPを獲得した27歳は、「オールスターくらいは笑顔で楽しまないとね」と勝ち誇った。さらに、27歳のステフィン・カリーが26得点、22歳のアンソニー・デイビスが24得点、27歳のケビン・デュラントが23得点を挙げた。
一方のイースタン・カンファレンスでは、2014年夏の右足骨折から立ち直った25歳のポール・ジョージが、1962年にウィルト・チェンバレンがマークした史上最多得点にあと1点に迫る41得点をマークして気を吐いた。
「世代交代の時間を目にしているのだろう。長きに渡って偶像的な存在であり続けたコービーが、若き選手たちに橋渡しをしたんだ」
ウェスタン・カンファレンスを率いたグレッグ・ポポビッチヘッドコーチの言葉は、今年度のオールスターの意味を分かりやすく物語っているように思えた。
スター選手たちが次の世代に道を開いていく
コービー(24番)はいなくなるが、新たなスター選手たちがリーグを引っ張る 【NBAE via Getty Images】
「マイケル・ジョーダン、アイザイア・トーマス、マジック・ジョンソン、チャールズ・バークリー、シャキール・オニールといった選手たちが僕たちの世代に道を開いてくれた。本人たちは気付いてなかっただろうけれど、子供だった僕たちに、彼らのようになりたいと思わせてくれたんだ」
アイバーソンがセレモニーでそう語っていた通り、常にスーパースターを中心に動くNBAでは、スター選手たちが次の世代に道を開いていく。
迎えた16年、コービーにとって最後のオールスターで、今まさに全盛期を迎える現代のニュースターたちが存在感をアピールしたのは偶然ではなかったのだろう。ここで過去と現在が見事につながり、おかげで16年のオールスターは綺麗な世代交代のストーリーになったのである。
コービーがいなくなるのは寂しいが、NBAは大丈夫だ。また新たなヒーローが生まれ、このリーグを引っ張っていってくれる。多くのファン、関係者がそう感じてトロントを去ることができたのだから、16年のオールスターウイークエンドは紛れもなく成功といってよかったはずだ。