琴奨菊が31歳で選んだ新たな“型” 左前みつ狙いが導いた初優勝

荒井太郎

綱取りへ体制は十分

今場所は左前みつをとってからの“がぶり”を徹底し、賜杯を手にした琴奨菊 【写真は共同】

 変えたのは相撲の「型」だけではない。体幹を一から鍛えるため、新たなトレーニング方法も取り入れて肉体改造にも着手。「ピーキング」という手法も導入し、どこにコンディションのピークを持っていくかも周到なプランを練った。導入直後の昨年9月場所で7場所ぶりの2ケタ勝利となる11勝をマーク。

 勝因を「根拠づくりができたから」と本人は言う。好成績は決して偶然ではないという自負の表れであった。「根拠」は自信の源となっていく。優勝を遂げた場所は、勝敗の結果で一喜一憂していた以前の姿はもはやなかった。結果より過程が大事ということを十分、実感しているからだ。

「自分を信じて、やるべきことをしっかりやって出し切る」と毎日、判で押したような同じコメントからは、揺るぎのない強靭な心も垣間見える。「相手への接着面を多くした」という復活した左四つからのがぶり寄りは、以前より数段、パワーアップ。加えて平常心というメンタル面の武器も手に入れた。

「大阪に行ったらガッツリきついトレーニングをやる」と琴奨菊再生のキーマンの1人、フィジカル面を担当する塩田宗広トレーナーも息巻く。

 初となる綱取りの体勢はすでに整っている。

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著者プロフィール

1967年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、百貨店勤務を経てフリーライターに転身。相撲ジャーナリストとして専門誌に寄稿、連載。およびテレビ出演、コメント提供多数。著書に『歴史ポケットスポーツ新聞 相撲』『歴史ポケットスポーツ新聞 プロレス』『東京六大学野球史』『大相撲事件史』『大相撲あるある』など。『大相撲八百長批判を嗤う』では著者の玉木正之氏と対談。雑誌『相撲ファン』で監修を務める。

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