高橋大輔、ラストダンスは笑顔とともに 写真で切り取るフィギュアの記憶

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 選手の数だけそれぞれの物語がある。笑顔、涙、怒り……こうした表情とともにこれまで多くの名場面が生まれてきた。後世まで脳裏に刻んでおきたいフィギュアスケートの記憶を写真で切り取る。

「高橋大輔 ソチ五輪男子FS(2014年)」

【Getty Images】

 自身にとって決して満足いく演技ではなかったと思う。それでも高橋大輔は晴れやかな笑顔を見せていた。メダル獲得を目指した3度目の五輪は6位。ケガの影響もあり、最後まで本調子とは程遠かった。

「受け入れるしかないので。終わったことは取り戻せないし、最後まであきらめずにやれたから、そういう表情になったのかなと思います」

 試練のシーズンだった。ソチ五輪3カ月前の11月に右ひざを負傷し、強行出場した年末の全日本選手権では5位に終わった。なんとか代表入りは果たしたが、今度は五輪が開幕する直前にSPで使用する曲『バイオリンのためのソナチネ』が、別人の作曲であったことが判明。思いも寄らない騒動に巻き込まれた。

 SPの3日前、会見場に現れた彼は心なしか疲れているように見えた。頬がややこけていたし、笑顔も少なかった。体調は良いが、ひざの回復具合は100パーセントではなかったという。この状態で戦えるのか。不安を感じたことを覚えている。
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