GK川島がクラブから期待される理由 降格圏からの“奇跡の残留”再現なるか

寺沢薫

川島に求められている「強い個性」の発揮

川島(中央)の「強い個性」が、最下位に沈むチームの“起爆剤”として求められている 【Getty Images】

 この「強い個性」こそ、クラブが川島を獲得した理由である。

 ダンディー・ユナイテッドはスコティッシュ・プレミアシップではおなじみの中堅クラブで、昨季まで8シーズン連続でリーグのトップ6を維持してきた。だが、今季はここまでダントツの最下位。22試合でわずか2勝、19得点45失点はいずれもリーグワーストで、現在も10月末の勝利を最後にリーグ9戦未勝利と大スランプのまっただ中だ。

 最下位が自動降格、11位が入れ替え戦を戦うことになるため、ダンディー・ユナイテッドは残り11試合で、9〜11位のチームとの14もの勝ち点差を縮めて、最低でもひとつは順位を上げなければ降格してしまう。およそ20年ぶりの2部転落に待ったなし。状況はまさに絶望的だ。

「チームにクオリティーはあるのに自信がない。ドレッシングルームの思考法を変える必要がある。選手たちを盛り上げ、気持ちを上げてくれるような新戦力が必要だ。降格すると思っていないような選手が欲しい」

 これはクラブOBで元キャプテンのモーリス・マルパスが『BBC』に寄せた談話だが、シーズン途中の10月から指揮を執る元フィンランド代表監督のパーテライネンはそうした“起爆剤”になり得る選手を、ここ数カ月で複数獲得してきた。イングランド・プレミア経験者のFWフローラン・シナマ・ポンゴルやDFギー・デメル、フィンランド代表FWリク・リスキといった選手とともに、川島もそうして白羽の矢を立てられた1人である。

スコットランドでの挑戦は始まったばかり

川島のスコットランドでの挑戦は始まったばかりだ 【Getty Images】

 川島に対するサポーターの期待値は中でも高い。3年ほど正GKを務めていた選手が昨夏退団したGKは、特に今季のウイークポイントとされてきた。川島加入までゴールを守ってきたのは21歳と22歳の2人でいずれも経験値に乏しく、ただでさえ指揮系統のない守備陣をまとめるには力不足だった。そんな中、代表71キャップ、2度のワールドカップ出場というスコットランドのGKではズバ抜けた実績を持つ川島は、クラブの“救世主”として迎え入れられているのだ。

 さらに、ベルギー時代の実績を引き合いに出したのは『スコッツマン』紙だ。
「2010−11シーズン、悲しい運命をたどりそうだったリールスを降格から救った彼の経験が助けになるかもしれない。川島が重要な試合でクリーンシートを達成し、リールスは1ポイント差で昇降格プレーオフを免れたことがある」

 思えば、ベルギーでの1年目も今回と似たような状況だった。このときも加入当初はチームの守備がボロボロで、0−7といった大量失点も経験した。それでも川島は諦めずに戦い続け、最後尾からチームを鼓舞し、最後は守備の中心となって奇跡の残留に貢献している。

 あの“大脱出”をもう一度――。半年間の浪人生活を経て、たどり着いたスコットランドでの挑戦は、まだ始まったばかりだ。

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、株式会社フットメディア(http://www.footmedia.jp/)在籍時にはプレミアリーグなど海外サッカー中継を中心としたテレビ番組制作に携わりながら、ライター、編集者、翻訳者として活動。ライターとしては『Number』『フットボリスタ』『ワールドサッカーキング』などに寄稿する

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