富山第一の伝統「ダイヤモンド・ナイン」 9つの言葉を胸に2年ぶりの日本一を誓う
2年ぶりに全国の舞台に戻ってきた富山第一
富山第一のメソッドであるダイヤモンド・ナインのイメージ、今季は一番上が[勝利]という言葉になっている 【スポーツナビ】
1月2日に行われた第94回高校サッカー選手権2回戦、富山第一は前半28分に坂本裕樹が奪ったゴールをしっかりと守り切り、1−0で日章学園(宮崎)に競り勝った。優勝時の富山第一は6試合で16得点9失点という、攻撃型のチームだった。しかし、今回のチームは先に点を奪って逃げ切ることを型にしているという。
「うち(富山第一)は2年前ほどの力はない。『不細工(なサッカー)だけど結果を残そうぜ』と。イタリアでは『1−0』(で勝つ試合)が一番美しいと言われる。それができるようになったのかもしれない。夏から徹底して、ボールを奪って速く攻めて、点を取って守り切るということをやってきた。今年のチームは力がない分、そういう戦い方に徹している。今日はそれができた」(大塚一朗監督)
優勝した時も、初戦は大苦戦した。
当時の1回戦の相手は長崎総科大附属(長崎)だった。1−0でリードした前半26分、富山第一は退場者を出してしまったが、それでも3−0と点差を広げた。そのまま大勝するかと思われたが、終わってみれば3−2と冷や汗モノの勝利だった。「あの時はインターハイでベスト8に入ったこともあり自信があったのですが、本当にギリギリの勝利で、やっとのことで初戦を乗り越えられた。今日は狙い通りのサッカーができたので良かったです」(大塚監督)
大塚監督いわく、危なく、綱渡りで不格好なサッカーをするチーム。そんな富山第一が今大会で目指すところは三ツ沢会場を突破し、ベスト4へ進出することなのだろうか。
先輩の思いを背負って、[勝利]を上に置いた
「ダイヤモンド・ナインというのは、自分たちで言葉を9つ決めて、それを並べると願い(=日本一)がかなう――というものです」
大塚監督が、富山第一のコーチに就任したのは2008年のこと。以来、生徒たちがいくつものグループに分かれて各自のダイヤモンド・ナインをプレゼンし、投票でチームとしてのダイヤモンド・ナインを決めるというのが伝統になっている。
ダイヤモンドの頂点にある言葉が、一番優先すべきこと。それから下へいくにつれて、優先順位は下がっていく。
「優勝した時のダイヤモンド・ナインは、一番上が[感謝]、一番下が[勝利]だった。学者の方も『それ、良いですね』と言ってくれたのですが、翌年のダイヤモンド・ナインは、一番上が[勝利]だった」(大塚監督)
一度は全国の頂点に立った富山第一だったが、その後、高校選手権も高校総体も県予選でベスト4止まりが続いた。だから昨季のチームは全国の舞台を知らなかった。昨季に引き続き、今季のチームもダイヤモンド・ナインの一番上に[勝利]という言葉を持ってきた(※図参照)。大塚監督は「お前ら、[勝利]を一番上にしたところで、(昨季と同様に)また勝てないじゃないか」と生徒たちに言った。すると彼らはこう答えたという。
「先生、僕たちはボトムアップです。一番下に[規律]があり、[人間性]があり、[信頼]がある。そしてその土台の上に[勝利]があります。これでいきましょう」
大塚監督は、「本当は上から優先順位を付けていくのがダイヤモンド・ナインだったのに、彼らはボトムアップにしてしまった」と苦笑を交えつつも、選手たちの自主的な発想意欲をたたえた。
主将の早川雄貴は、その意図をこう語る。
「本当なら一番上の[勝利]を達成しなければならないのですが、そのためには下の[規律]、[信頼]といった部分を土台にして頑張らなければ上の[勝利]につながらない。という意味を込めました」(早川)
プレゼンテーションの時、早川のグループは[勝利]を一番下に置こうと主張したと言う。10あったダイヤモンド・ナインを3つに絞り込み、問答を繰り返し最後の投票で今回のダイヤモンド・ナインが完成した。
「去年の先輩方からの『全国に行ってくれ』という思いがすごくあった。そういう先輩の思いを僕たちが背負って、[勝利]を上に置きました」(早川)