チームを優勝に導く「エース」は誰だ? 逸材そろう春高バレーの見どころ<男子>

田中夕子

世界ユースの出場メンバーにも注目

開智のエース堀江友裕は守備力にも定評がある 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 Team COREに選出されているのは2人だけですが、昨年の世界ユース選手権に出場したメンバーなど、春高での活躍が期待される注目選手はまだまだいます。

 まずは開智高校(和歌山)の堀江友裕選手。彼はチームではスパイカー、エースとして活躍する選手ですが、全日本ユースチームにはリベロとして選ばれており、世界ユース選手権にもリベロとして出場した非常に守備力の高い選手です。ディフェンスだけでなく、コート全体のムードも作れる選手で、開智高校の完成度が高いコンビバレー、ディフェンスからの攻めの起点になる選手でもある。勝ちあがるには強豪との対戦が続く、厳しいゾーンに入りましたが、その中でどんなプレーを見せるか、とても期待しています。

 同じく世界ユース選手権に出場したのが西原高校(沖縄)の仲本賢優選手。身長は187センチと高さがあるわけではありませんが、ディフェンスがしっかりしていて、何より、周囲に「この選手は何かを持っている」と感じさせる雰囲気、勝負強さがあります。たとえ途中出場でも、コートに入ったら委縮するどころか「ここで何かやってやろう」と果敢に挑み、見ているわれわれも「こんな場面でこんなサーブを打つの?」と驚かされるような選手です。体力面を見ても高校3年間でジャンプ力などが同学年の選手たちの中でも一番成長した選手であり、どんな場面でも物怖じしない強さがある。将来の活躍が非常に楽しみな選手です。

 それからもう1人、3年生の注目選手が石川県工高校の道井淳平選手です。昨年まではライトでスパイカーとして活躍していた選手でしたが、将来に向け、セッターとして臨む覚悟を決め、本格的にセッターへ転向しました。経験はまだ少ないとはいえ、何といっても魅力は高さ。195センチのセッターは日本の将来にとって、まさに使命として育てるべき存在でもあります。実際に今年7月に行われた、Team COREの選手や全日本U−23の選手を対象とした鹿児島県薩摩川内市での合宿に道井選手も招へいしました。セットする位置が抜群に高く、高い能力もあります。石川県工高の大塚正則先生がセッター出身なので、セッターとしての心構えやトスワークなどを徹底的に鍛えています。実際に高校選抜でも経験を積み、国体では3位に入るなど、セッターとしてチームを上位に導ける力をつけています。トスを上げることはもちろんですが、チャンスがあれば得点するためにツーアタックも打てる強みがあります。高さがあり、攻撃力も備えたセッターとして、将来は東福岡の金子選手と張り合いながら、スタイルの違うセッターとして切磋琢磨(せっさたくま)してほしいですね。

2年生ながら注目を集める選手とは?

 注目選手は3年生だけでなく、2年生にもいます。どちらもチームのエースとして活躍する選手で、1人は世界ユース選手権にも出場した星城高校(愛知)の都築仁選手、もう1人が上越総合技術高校(新潟)の新井雄大選手です。

 都築選手は大会出場選手の中でも1、2を争う高さがあり、1年生から星城でレギュラーをつかんだ攻撃力のある選手です。加えて、打つだけでなく股関節が非常に柔らかいのでレシーブの範囲も広く、ディフェンス力もある。実に高い能力を備えています。かつて石川選手が在籍し、いくつものタイトルを獲得した星城のエースということで、いろいろなプレッシャーもあると思いますが、そのプレッシャーの中でどんなパフォーマンスが出せるのかも非常に楽しみです。

 新井選手も仲本選手と同様に、身長は187センチと高さはありませんが、最高到達点は342センチでとにかく跳躍力が素晴らしい。守備力の高い選手が周りを固めているので、周りが拾って、つないだボールを新井選手に上げる。去年、地区大会で新井選手を始めて見た時に「これはすごいぞ」と驚きました。たとえブロックが2枚、3枚来ようが逃げずに、ジャンプを生かしてドカンと打ち切る。守備力では確かに課題もありますが、抜群の跳躍力という武器がある。「コレ」という武器を持ったスペシャリストは強い。初めての春高で自分の力、武器を存分に発揮してほしいですね。

どれだけチームカラーが発揮できるか

今大会はどこが勝ってもおかしくない。前回大会優勝の東福岡も連覇を狙う 【坂本清】

 チームとして注目するのは大村工業高校(長崎)、創造学園高校(長野)といった正確な基本技術をベースとし、緻密なバレーを武器とするチームです。大村工業はディフェンスが非常に堅く、粘り強いディフェンスから切り返して攻撃する。創造学園も前衛の3人が同時に跳ぶチェーンブロックでしつこく粘り、チャンスボールをきっちり決める。両校共に床にボールを落とさないバレーを展開するチームですので、決して派手ではないかもしれませんが、十分に頂点を狙える力を備えているのは間違いありません。

 そしてインターハイの覇者である大塚高校(大阪)。春高でも近年は常に上位進出を果たしているチームで、大きな大会で自分たちがどんなバレーをすれば勝ち残れるか、という手立てを持ち、それぞれが理解しながら戦っています。「サーカスバレー」と称される巧みなコンビバレーは、見る人を惹きつける力がありますし、大塚高校のように大胆なチームカラーを打ち出して戦うのも春高バレーの魅力です。チームの武器をどう生かすか、非常に注目しています。

 どのチームにとっても初戦の入り方は大きなポイントですが、4回戦、準々決勝と1日で2試合を行う7日の戦い方、5セットマッチになる準決勝からの戦い方というのもひとつのキーポイントになるはずです。また、大会前にはほとんど注目されていなかった学校が勝ち上がったり、印象に残るような活躍をするシンデレラボーイ、シンデレラガールが出てくるのも春高の楽しみです。地区予選の結果だけを見ても、接戦が非常に多く実力は拮抗(きっこう)しています。どのチームにとってもチャンスがある大会で、どこが勝ってもおかしくない。かつて東亜学園(東京)や都城工業(宮崎)のように、開幕前は優勝候補として挙げられていなかった学校が優勝したように、今はノーマークでも完成度の高いチームが頂点に立つこともあるかもしれません。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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