青森山田が手に入れた「総合力」 苦しみを昇華させ選手権へと挑む
インターハイ後にチーム内競争が激化
シーズン序盤、1トップの座は3年生の田中優勢と2年生の鳴海彰人が併用されていたが、中盤以降は鳴海彰人が台頭。左MFもキックのうまい三上孝太がレギュラーだったが、仕掛けのうまさが光る2年生の嵯峨理久が台頭し、夏にはポジションを奪った。さらにインターハイ以降は、これまで常田と近藤瑛佑の不動だったCBコンビの間に、ビルドアップのうまい3年生・波塚勇平がコンディションを上げて割って入ってきた。
そしてプレミア最終戦では、不動の守護神として君臨して来たU−18日本代表GKの2年生・廣末陸ではなく、3年生のGK木村大地がスタメン出場。左MFには嵯峨にレギュラーを奪われていた三上がスタメン復帰し、中盤もこれまで不動のアンカーだった住永ではなく、守備力が高く、Bチームでキャプテンを務めていた3年生MF岡西亨弥を起用した。
木村は安定したプレーを見せ、三上は正確なキックでチャンスを演出。岡西もヘッドの強さと対人の強さを発揮し、勝利に大きく貢献してみせた。
「悔しさを継続させたまま選手権に臨む」
この黒田監督の言葉の裏側にある手応えは、非常に大きなものであった。プレミアリーグの立ち上げ(今年で5年目)からずっと所属する青森山田は、毎年残留を続けてきたた。リーグ最終戦前までに残留を決めることが多かったため、そこでチームは一度ホッと落ち着いてしまい、リーグ最終戦を昨年まで勝ったことがなかった。一度息が少し抜けた状態から、選手権に向けてギアを巻き直さなければいけなかった。
しかし、今年は違う。最後の最後まで優勝の可能性を大きく残し、熾烈(しれつ)な首位争いを演じたことで、最後まで気の引き締まる試合と自信を積み重ねることができた。そして、5年目にして初めてリーグ最終戦で勝利を収め、優勝を逃した悔しさを味わった。
今までにない結果と想いを刻むことができた。この結果を生み出した最大の要因は、青森山田が「真の強豪」として手に入れた、どんな相手でも力を発揮できる、誰が出ても力が発揮できる力であった。
「選手権とプレミアリーグの戦い方の違いに気付いたのが、1〜2年目。3〜4年目は引いて守るのではなく、前から積極的にいって戦わないと上には行けないと思ってトライした。そして5年目の今年は、その積み上げから、前から守備をしながら、自分たちの持ち味をリーグで出せるようになった。(選手たちは)大きく成長してくれた。何より、多くの選手が持ち味を出して成長をしてくれて、スタメンに頭を悩ませるようになってくれたことは大きい」(黒田監督)
監督自身も経験をじっくりと積み上げてきた。そしてそれをベースに、選手たちも夏の悔しさ、苦しみを昇華させ、青森山田に新たなる流れを生み出した。
「この悔しさを晴らせるのは選手権しかない。もっと一体感を持って、全力で向かっていきたい」(神谷)
この流れに乗って、頂点を目指すべく。「悔しさ」という“大きな燃料”を携えて、総合力が増した青森山田は選手権に臨む。