船木vs関本を堪能するための2つのポイント 諏訪魔が初参戦リアルジャパンで求める刺激

リアルジャパンプロレス

船木と関本を結びつけた“タイガーマスク”

初防衛戦で関本大介を迎え撃つレジェンド王者・船木誠勝 【リアルジャパンプロレス】

 12月9日、東京・後楽園ホールでリアルジャパンプロレス年内最後の大会となる「初代タイガーマスク黄金伝説〜LEGEND OF THE GOLD III」が開催される。
 メインイベントはレジェンド王者となった船木誠勝の初防衛戦。「ギリギリの試合がしたい」という新王者に対し、挑戦者として名乗りを挙げたのが大日本プロレスの関本大介だ。「船木の技」対「関本の力」。タイプの違う2人の戦いは刺激的だが、この一戦を楽しむ上で2つのポイントを挙げたい。

 1つは「過去の関係」。世代も歩んできた道のりもまったく違う船木と関本の間に、2011年12月に全日本マットで実現した1度きりの直接対決以外接点はないと思われていたが、船木が一時現役生活を離れ、役者として活動していた時に秘めた関係があった。
 2005年に公開された映画『真説タイガーマスク』。哀川翔さんが主役を務めたこの作品で、船木はタイガーマスク役を演じている。引退して5年が経ち、格闘技生活から完全に離れていた船木は、タイガーマスクの動きを再現すべく、佐山サトル本人に師事して特訓を行った。場所は大日本プロレス道場。その相手を務めたのが関本だった。1999年にデビューした関本が大日本のデスマッチ戦線でちょうど頭角を現し始めていた時期のことだ。

 子供の頃からプロレスファンだった関本は、“U系”も好きで、パンクラス時代の船木の試合も見ていた。一大ムーブメントを作り上げたパンクラスをけん引する船木の姿は、学生時代の関本から見て、光り輝いていたに違いない。そんな船木との練習はとにかく緊張したという。
 船木はこの映画に出演したのが縁で、リアルジャパンプロレスの旗揚げ会見に出席。その関係が10年後のリアルジャパン参戦につながった。つまり、リアルジャパン旗揚げ直前に、初代タイガーマスク、船木、関本が一緒にトレーニングを積んでいたのだ。旗揚げ10周年記念イヤー最後の大会で、この2人がメインイベントで対戦するのはとても運命的である。

勝負の分かれ目になる「浴びせ蹴り」

 もう1つのポイントは試合に直接関係のある「浴びせ蹴り」だ。上記した全日本マットでの直接対決(2011年12月1日、名古屋国際会議場大会における「世界最強タッグ決定リーグ戦」公式戦、船木&河野真幸vs.関本&岡林裕二)で、関本は船木の浴びせ蹴りを不意打ちで食らい、KO寸前に追い込まれた。
 船木は今回の試合に向けて、「打撃で攻める」と明言している。当然、浴びせ蹴りも狙っていくはず。実際にベルト奪取を果たした9.18後楽園でのスーパー・タイガー戦でも、浴びせ蹴りが勝利の決め手となった。「浴びせ蹴り」がどこで放たれ、関本がどう対応するのか。これが勝負の分かれ目になる可能性が高い。一瞬で決まる技だけに、一秒たりとも見逃せない戦いになりそうだ。

S・タイガーと諏訪魔の初遭遇が持つ可能性

リアルジャパン初参戦の諏訪魔は前王者S・タイガーを相手にどんな戦いを見せるのか 【リアルジャパンプロレス】

 セミファイナルでも注目の対戦カードが実現。元レジェンド王者スーパー・タイガーが初参戦の全日本プロレス・諏訪魔とタッグで対戦する。S・タイガーはアレクサンダー大塚と、諏訪魔は佐藤光留とそれぞれ組んで激突するが、両者にとってこの試合は“出直し”の一戦となる。
 S・タイガーは2013年12月に長井満也を破ってレジェンド王座を戴冠。船木に敗れるまで4度の防衛に成功し、1年9カ月間ベルトを保持していた。それ以前にも2012年7月から8カ月間王者だった時期があり、まさにS・タイガーにとっては“虎の子”と言えるベルトだ。そんな王座から陥落してしまったのは、大きな後退を意味する。万全ではないコンディションだったとはいえ、船木に完敗を喫したインパクトはそれほど大きい。
 ベルトを失った以上に大きいのは、リアルジャパンをけん引する立場を船木に奪われてしまったことだろう。初代タイガーマスクの欠場という非常事態の中、リアルジャパンを背負って立とうと決意したはずなのに、通行手形であるレジェンド王座を失ってしまった。
 今回は再び高みを目指すためにも大事な再起戦。そこでS・タイガーは自ら外部との対戦に活路を開こうと団体側に働きかけ、諏訪魔との対戦が決まったのだ。

 一方、諏訪魔も外部との戦いで辛酸を舐めたばかり。新たな刺激を求めて、昨年から藤田和之戦実現に動いたものの、舌戦ばかりが続いて泥沼化。天龍源一郎の粋な計らいで、11.15両国で行われた引退興行のセミファイナルでやっとタッグ対決(諏訪魔&岡林vs.藤田&関本)が現実のものになったが、肝心の戦いは噛み合わず、激しいブーイングを浴び、パートナーを務めた大日本勢の名が大きく上がる結果となった。
 そんな状況でも、諏訪魔は対他団体の継続を決意。そこで決まった最初の試合が今回のリアルジャパン参戦だった。S・タイガーの格闘家としての実力も決して侮れない。藤田戦に引けを取らない危険な対決となる。

 この試合はさらにその先を見据えた戦いでもある。2人ともメインイベントを強く意識。S・タイガーは当然、レジェンド王座返り咲きを目指しており、諏訪魔もこのベルトに興味を示した。両者とも内容でメインを食ってやろうと虎視眈々と狙っている。
 諏訪魔は前述した天龍引退興行で関本と対戦しており、大日本の12.20横浜大会ではタッグ結成も控えている。かつてはアジアタッグ王座を懸けて争った両雄のライバル関係が一気に燃え上がる可能性も……。もちろん船木も全日本マットでしのぎを削った仲だ。そこにS・タイガーも加われば、リアルジャパン、全日本、大日本の3団体を股にかけた抗争に発展する可能性もある。ただ、今後につなげるためには、なにより今回の試合が激しい戦いにならなければならない。S・タイガーにも、諏訪魔にも、溜め込んだうっぷんを晴らすような大暴れを期待したい。

藤波を支える息子LEONAにも注目

負傷から復帰したばかりの藤波を支える息子LEONAの動きにも注目 【リアルジャパンプロレス】

 その他の対戦カードも全て注目の試合が組まれた。第4試合は藤波辰爾&柴田正人&LEONAvs.グレート・タイガー&エディ・フレンチ&那須晃太郎の一戦。藤波は持病でもある椎間板ヘルニアに加えて脊柱管狭窄症も併発して、9月に腰を手術し、11月に復帰したばかり。ほぼ毎大会出場しているリアルジャパンでも9月大会を欠場しており、半年ぶりの登場となる。
 鋭い蹴りとラフファイトを巧みに使い分けるG・タイガー、レスリングとルチャを融合させた変則的な戦いを見せるフレンチ、イキのいい蹴撃ファイターの那須と相手はくせ者揃い。まだコンディションが万全とは言えない藤波にとってやりづらい3人となるが、ここで心強いパートナーとなるのが息子のLEONAだ。急きょ欠場した藤波に代わり、ドラディションの10月シリーズでは連日2試合出場のダブルヘッダーを経験。精神的に一回りも二回りも大きくなった。また柴田もリアルジャパンマットで存在感を強めており、頼りになるはず。藤波だけでなくパートナーの2人の動きにも注目したい。

 第3試合はウルティモ・ドラゴン&田中稔vs.ザ・グレート・サスケ&折原昌夫のタッグマッチ。プロレス界で頂上を極めた実力のあるジュニア戦士が揃ったこれ以上にない豪華な試合だが、折原は6月大会で古傷の首を痛めて、9月大会を欠場しており、半年ぶりのリアルジャパン復帰となる。約3年ぶりの出場となるサスケとのコンビで、ウルティモ&稔の実力者タッグを破り、復帰戦を勝利で飾りたいところだが……。

 第2試合は5分3ラウンド制という変則的な試合。関節技を得意とするタカ・クノウと長谷川秀彦が対戦する。クノウは2010年に開催された第3回世界グラップリング選手権で日本人初の王者になった猛者。一方、長谷川は元全日本サンボ王者であり、元DEEPウェルター級王者で、今年6月にリアルジャパンマットでプロレスデビューを果たしたばかり。世界レベルの関節技の取り合いがこの試合の見所となるが、同時にプロレスへの順応能力も見比べたい。

 そして、第1試合ではスーパー・ライダー&間下隼人vs.グラン浜田&“力道山三世”力のタッグマッチ。間下と力は対戦するたびに意識した戦いを繰り広げており、今回も激しいぶつかり合いでのっけから場内を盛り上げてくれるはずだ。

 今年最後のリアルジャパンプロレスでも熱く激しい“ストロングスタイル”が体感できることは間違いなし。ぜひ会場に訪れて、その目で目撃してみよう!

(構成・文:村上謙三久)
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