広島・森保監督が語る成長の自負 競争と我慢で得たJ優勝と世界への挑戦権

寺田弘幸

一年間の集大成となったCS決勝

チームの総合力を示した広島が、次はクラブワールドカップで躍動する 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

 そしてシーズン終盤、チームは活力に満ちていた。そのエネルギー源となったのは、森保監督がシーズンの最初に示したチーム内の競争だ。ヤマザキナビスコカップで信頼して起用してきた若手たちは、モチベーションを高く保ってトレーニングに挑んできた。けがで苦しいシーズンを送っていた山岸智は、セカンドステージ第14節・川崎フロンターレ戦で決勝ゴールを挙げる活躍を見せ、「どんな状況でもひとりひとりが日々のトレーニングを大切にしている」と自負した。シーズンをけん引してきた柏好文が負傷離脱しても清水航平が大活躍を見せ、水本裕貴の負傷は新加入の佐々木翔が埋める。チームの総合力を高めて臨んだCS決勝は、15年の広島の集大成が示された。

 したたかにゲームを進めていく勝負強さが光り、2戦とも先制点を奪われる展開になってもチームは我慢強く戦い抜き、途中出場の選手が結果を残していく。第1戦のヒーローになった柏は「チャンスがくる時のために、僕だけじゃなくてみんなが準備している。それが今年の広島の強さ」と胸を張った。

「一部の主力選手だけでこのCSに辿り着いたわけではなく、日頃からチーム全体で良いトレーニングをして、良いエネルギーを持って試合に向かうことをやってきた」

「今シーズンを通して見せてきた、劣勢の中でも反発力を持ってはねのけること、劣勢になっても粘り強く辛抱強く戦っていく継続力を見せてくれた」

 森保監督は一年間、競争と我慢によってチームが成長してきた自負を語った。

 そして、年間勝ち点1位の強さを証明しなければならない状況で「プレッシャーしかなかった」(佐藤寿人)CSの舞台を乗り越えたチームは、さらにたくましさを増している。「こういう戦いをして得るものもあるんじゃないかと思っていましたけれど、実際に戦ってみて本当に経験できないような試合を経験できたなと思います」(塩谷司)。

 苦しみながらもチーム全員でCSを制した経験が一回りも二回り広島を成長させ、広島は12年以来2度目の出場となるFIFAクラブワールドカップに出場する。舞台は各大陸のチャンピオンが集う「本当に楽しい大会」(佐藤)に変わり、広島の選手たちは思う存分、躍動するだろう。「勝負しにいくのは間違いない。日本代表として勝ちにいくことを求めたい」。青山は自信をみなぎらせている。勝ち進めば進むほどハードな日程になるからこそ、蓄えてきたチームの総合力を示すことができる。広島は総力を結集して檜舞台へと挑む。

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著者プロフィール

1980年生まれ。広島県出身。2007年からライターとして活動を開始し、サッカー専門新聞『EL GORAZO』にてサンフレッチェ広島とファジアーノ岡山を担当。著書に『束ねる力 新時代のリーダー・サッカー日本代表監督 森保一』(ELGORAZO BOOKS)。ファジアーノ岡山の生の情報を届けるWEBマガジン『ファジラボ』を運営。

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