1部昇格を目指す金満ライプツィヒの野望 ボーフムに見る“伝統的”クラブのあり方
商業主義的な進化を望む者と拒否する者
1部昇格を目指すRBライプツィヒは、レッドブルというブランドのけん引車となっている 【Bongarts/Getty Images】
「RBライプツィヒについては、DFL(ドイツ・フットボールリーグ)がすべて調査した。今はヴォルフスブルクについて話し合いを始めるべきでは? もしくは、ホッフェンハイムでしょう? それとも、クラブ名に企業名が入っているバイヤー・レヴァークーゼンかな?」
ドイツ語では、「教会は村の中にとどまるべきだ」という言い回しをする。落ち着け、という意味だ。とにかく、1部リーグで戦うチームはスポーツ的にトップでプレーできるチームだけだというのは、揺るぎない事実だ。
デメジエールは、特定の投資家がクラブの株の過半数以上を所有することができないようにする「50+1ルール」で問題を抱えるハノーファー96については言及しなかった。バイエルン・ミュンヘンについての話もなかった。アディダス社とアウディ社が、経営的に大きな地位を占めるクラブのことだ。サッカーの世界で、商業的価値を押しとどめることは無理である。
クラブは、自分の地位を保つために資金を必要としている。チケット販売、ユニホームの胸にスポンサー名を掲出すること、スタジアム名を売却することだけではタイトルは勝ち取れない。国内のみならず、国際的にもそうなっている。成功のビジネスモデルは、違う形で成長している。ミュンヘンやドルトムント、そしてライプツィヒで、その例は目にできる。
だが、「RBライプツィヒ」は新たな方向への成長を見せている。スポーツ的な意味だけではない。清涼飲料の売り上げを伸ばすため、クラブはブランドのけん引車となっているのだ。
ただし、これはRBライプツィヒの歴史の正しさを証明するわけではない。オーストリア人のディートリヒ・マテシツ(レッドブル社の創業者の一人)は、ドイツ2部に所属するザンクト・パウリの役員会の過半数を占めようとした。だが、ザンクト・パウリにおけるクラブの価値観は、商業主義とは程遠いところにあった。デュッセルドルフでも、フォルトゥナ・デュッセルドルフがレッドブルなりのドイツサッカーの進化に拒否の姿勢を示した。
対立もまた現代サッカーの一部
新興クラブと“伝統的”クラブの対立という構図もまた、現代サッカーの一部だ 【Bongarts/Getty Images】
もはや現代サッカーで、焦点はスポーツ面だけにとどまらない。サッカーは、金を生むマシーンである。この人気のスポーツをけん引するのは、もはや選手と監督だけではない。
商業的側面は、もはやサッカーとは切り離せない。その事実には、ボーフムのファンもとっくに気づいている。だからこそ、彼らは金満クラブに向けて金切り声を上げる。それもまた、現代サッカーの一部であり、ボーフムがそこから逃れるすべはない。そしてまた、この対立構図がリーグを盛り上げるというのも、現代サッカーの一部なのである。
現在、ボーフムは3位のRBライプツィヒを勝ち点4差で追っている。“伝統的”クラブを盛り上げるには、絶妙のポイント差だ(第15節までを終えて、勝ち点差は6に開いた)。
(翻訳:杉山孝)