浅田真央が見せたうれし泣きと笑顔 写真で切り取るフィギュアの記憶(1)

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 選手の数だけそれぞれの物語がある。笑顔、涙、怒り……こうした表情とともにこれまで多くの名場面が生まれてきた。後世まで脳裏に刻んでおきたいフィギュアスケートの記憶を写真で切り取る。

「浅田真央 ソチ五輪女子FS(2014年)」

【写真:青木紘二/アフロスポーツ】

 不思議な光景だった。浅田真央(中京大)の滑走順は12番目。第2グループという前半での演技だったからだ。いつも彼女が滑るのはもっと後のほうで、見ている側からしても、予期せぬ出来事だった。前日のSPはまさかの16位。

「体がうまく動かなかった」

 彼女はかつてないほど憔悴した表情で声を振り絞った。コメントを聞いているだけでその絶望感は伝わってくる。スケート人生の集大成として位置づけた五輪であったはずなのに、金メダルという夢は一瞬にして遠ざかってしまったのだ。

 しかし、それからわずか1日後、彼女はよみがえった。冒頭のトリプルアクセルを成功させ、その後も次々とジャンプを決めていく。演技中の表情からは、何か吹っ切れたものを感じさせた。

「自分を信じて、自信を持って、練習してきたことを信じて、昨日のようになってもとにかく跳ぶという気持ちだった」

 終わった瞬間、彼女は感情を爆発させた。一体どれだけ大きなものを背負っていたのか。それは想像すら及ばない。だが、彼女が最後に見せたうれし泣きと笑顔が、人々の記憶に永遠に残るであろうことを想像するのはたやすかった。

(文:大橋護良/スポーツナビ)
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