大谷の前に“らしさ”消えた韓国 打線沈黙の理由を読み解く
積極性見えず、チャンスをつぶした韓国
最終回にイ・デホ(写真)らのヒットでチャンスをつくるもホームが遠かった韓国打線 【Getty Images】
0−2、日本の2点リードで迎えた5回表。韓国は5番パク・ビョンホの詰まった当たりがライトの前に落ちる二塁打になり、続く6番ソン・アソプの四球で無死一、二塁のチャンスをつかんだ。打席には7番のホ・ギョンミン。ここで韓国ベンチは送りバントの指示を出す。しかし初球、2球目とファウルとなり失敗。結局ホ・ギョンミンは空振り三振に倒れた。
キム・インシク監督は大会前、日本戦での戦術について、「チャンスでランナーをバントで進めたとしても、ピッチャーがいい日本相手では点が入る保証はない。積極的な攻めをする」と話していた。だがこの場面ではバントを試み、失敗。続く8番カン・ミンホ、9番に代打ナ・ソンボムを送るもいずれも三振に倒れ、追撃には至らなかった。
結果論ではあるが、ホ・ギョンミンのところでナ・ソンボムを代打に送り、強攻策をとるという手もあった。ナ・ソンボムはKBOリーグで最も初球打ちが多く、初球の打率は3割6分6厘。1球目から思い切ったスイングをする打者だ。また無死での打率が3割8分3厘なのに対し、2死では2割7分2厘と落ちる。無死一、二塁でナ・ソンボムを送り出した方が、積極的な「韓国らしさ」が見られ、大谷にとっても嫌だったのではないか。
大谷と2度目の対戦はあるのか
現役時代、国際大会で幾度も韓国と対戦し、現在は日本代表の打撃コーチを務める稲葉篤紀氏(43歳)は、先月の韓国視察の際、韓国に対して「何をしてくるか分からない怖さがある」と話した。相手にそう思わせることは、精神的に優位に立てる。しかし今回の韓国代表は、相手に何かを考えさせるようなそぶりが、初回に1、2番コンビが見せたセーフティーバントの構え以外になかった。
「1次ラウンドはリーグ戦。トーナメントではない」。今回の日本戦を前に、韓国の選手数人からそんな声が聞かれた。キム・インシク監督も「1次ラウンドでは3勝すれば、決勝トーナメントに進めるのではないか」と話している。「負けたら終わり」の土壇場でこそ力を発揮する韓国は、目論見通り残り4試合で3勝することができるか。
もし日本、韓国ともに決勝トーナメントに進んだ場合、対戦する可能性は決勝、準決勝、3位決定戦のいずれかだ。もしその機会が訪れ、マウンドに大谷の姿があった時、韓国の打者たちは敗戦後の視線の先にあったものを、具現化することになる。