大谷の前に“らしさ”消えた韓国
打線沈黙の理由を読み解く

積極性見えず、チャンスをつぶした韓国

最終回にイ・デホ(写真)らのヒットでチャンスをつくるもホームが遠かった韓国打線
最終回にイ・デホ(写真)らのヒットでチャンスをつくるもホームが遠かった韓国打線【Getty Images】

 前回のコラム(11月8日掲載『6年ぶりに日本と対戦する韓国代表の戦力』)では、韓国の記者の大半が「韓国の打者は大谷の速球とフォークを攻略できないので勝てないと韓国メディアは予想した」と書いたが、8日の試合は彼らが想像していた通りの結果となった。しかし韓国は大谷の前にまったくチャンスがなかったわけではない。チャンスをつくるもベンチがそれを生かせなかった。


 0−2、日本の2点リードで迎えた5回表。韓国は5番パク・ビョンホの詰まった当たりがライトの前に落ちる二塁打になり、続く6番ソン・アソプの四球で無死一、二塁のチャンスをつかんだ。打席には7番のホ・ギョンミン。ここで韓国ベンチは送りバントの指示を出す。しかし初球、2球目とファウルとなり失敗。結局ホ・ギョンミンは空振り三振に倒れた。


 キム・インシク監督は大会前、日本戦での戦術について、「チャンスでランナーをバントで進めたとしても、ピッチャーがいい日本相手では点が入る保証はない。積極的な攻めをする」と話していた。だがこの場面ではバントを試み、失敗。続く8番カン・ミンホ、9番に代打ナ・ソンボムを送るもいずれも三振に倒れ、追撃には至らなかった。


 結果論ではあるが、ホ・ギョンミンのところでナ・ソンボムを代打に送り、強攻策をとるという手もあった。ナ・ソンボムはKBOリーグで最も初球打ちが多く、初球の打率は3割6分6厘。1球目から思い切ったスイングをする打者だ。また無死での打率が3割8分3厘なのに対し、2死では2割7分2厘と落ちる。無死一、二塁でナ・ソンボムを送り出した方が、積極的な「韓国らしさ」が見られ、大谷にとっても嫌だったのではないか。

大谷と2度目の対戦はあるのか

 また大谷が降板した後、0−5で迎えた9回表にも韓国は、4番イ・デホがレフト前ヒットで出塁し、その後2者連続ヒットで無死満塁のチャンスをつくったが下位打線が凡退。韓国は完封負けした。この場面、最初に出塁したイ・デホに代走が出ていれば、6番ソン・アソプのライト前ヒットでホームにかえることができた。しかしベンチは動かなかった。キム・インシク監督はそれについて「次にイ・デホに回る可能性を考えて」としたが、5点差を追いつくことを考えるなら、まずは1点を取る必要があったように思う。


 現役時代、国際大会で幾度も韓国と対戦し、現在は日本代表の打撃コーチを務める稲葉篤紀氏(43歳)は、先月の韓国視察の際、韓国に対して「何をしてくるか分からない怖さがある」と話した。相手にそう思わせることは、精神的に優位に立てる。しかし今回の韓国代表は、相手に何かを考えさせるようなそぶりが、初回に1、2番コンビが見せたセーフティーバントの構え以外になかった。


「1次ラウンドはリーグ戦。トーナメントではない」。今回の日本戦を前に、韓国の選手数人からそんな声が聞かれた。キム・インシク監督も「1次ラウンドでは3勝すれば、決勝トーナメントに進めるのではないか」と話している。「負けたら終わり」の土壇場でこそ力を発揮する韓国は、目論見通り残り4試合で3勝することができるか。


 もし日本、韓国ともに決勝トーナメントに進んだ場合、対戦する可能性は決勝、準決勝、3位決定戦のいずれかだ。もしその機会が訪れ、マウンドに大谷の姿があった時、韓国の打者たちは敗戦後の視線の先にあったものを、具現化することになる。

室井昌也
室井昌也

1972年、東京生まれ。韓国プロ野球の伝え手として、2004年から著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』を毎年発行。韓国では2006年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当し、その他、取材成果や韓国球界とのつながりはメディアや日本の球団などでも反映されている。ストライク・ゾーン取締役社長。

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