侍ジャパンが「大切な」福岡で潰せた課題 「ミスのない確実な野球」で世界一へ

田尻耕太郎

守備の約束は「まとまっている」

公式球が日本と同じミズノ製ということもあり、強化試合第1戦の先発を務めた前田ら日本の武器である投手陣の出来は上々だった 【写真は共同】

 また、この福岡での期間で、1つの課題をきっちり潰して本戦に臨む。

 昨年の日米野球で書いたコラムをまず引用する。
<第2戦のことだ。8回裏、先頭のゾブリスト(レイズ)の打球は今宮健太(福岡ソフトバンク)の後方へ上がったフライだった。今宮は背走しながら声を出し、大きなジェスチャーをとった。しかし次の瞬間、突然しゃがみ込んで中堅手の丸佳浩(広島)に打球を譲ったのである。それに驚いた丸は立ち止まり、打球はその間にポトリと落ちた(打球は中田が処理し、記録はレフトへのツーベース)。その場面こそ、急造チームである侍ジャパンの欠点だった。
「ソフトバンクでは声を出した選手が捕る。その時、周りは声を上げないんです。あの時、丸さんはたぶん『任せた!』と言ったと思うんですが、僕は声が聞こえたことに反応して追うのを止めてしまった。当たり前のことが確認できていなかったために起きたプレーでした」>

 今宮は、柳田悠岐(福岡ソフトバンク)の出場辞退により、急きょ今回の代表に招集された。そこで今宮に訊ねてみると、「今回はミーティングの中でしっかりまとまっています」とのこと。

強化試合2戦で結果以上の収穫

 昨年の日米野球にも帯同した奈良原浩ヘッドコーチにも話しを聞いた。
「昨年ありましたね。捕りに行く人間が声を出すというのは基本です。なので、捕らない選手は声を上げないというルールを確認しました」

 強化試合第2戦に、いいシーンがあった。6回表。サード後方へのフライが上がると、ショートを守る坂本が「ガーリ(I got it)、ガーリ」と大きな声を上げて回り込み、きっちりキャッチした。いつも大声を張り上げる三塁手の松田宣浩(福岡ソフトバンク)の声はまったく聞こえなかった。

「札幌、台湾と移動して戦う。バタバタになってしまうので、福岡での時間がとても大切になる」と語っていた小久保監督。強化試合に連勝したとか、苦戦したとかという結果以上の収穫は、確かにあった。

 打線は水ものという。本大会が始まればここぞの場面で最高の一本が出ることを期待しつつ、日本らしい「ミスのない確実な野球」で戦えば、栄冠にはおのずと近づいていくはずなのだ。

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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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