バルセロナに冬の補強は必要か? 守備は安定も懸念される前線の人材不足

課題の守備が安定してきたバルセロナ

けが人や出場停止が相次いでいるバルセロナだが、イニエスタ(中央)が復帰したのは好材料 【Getty Images】

 2015年の終了とともに、ようやくバルセロナはFIFA(国際サッカー連盟)の制裁から解放され、自由に選手を補強できるようになる。

 今季のバルセロナは、とりわけ攻撃陣の顔ぶれを見れば分かる通り、あまりにも選手層が薄すぎると言われていた。そのため冬の移籍市場が近づくにつれ、すでに加入しながら選手登録のできないアルダ・トゥラン、アレイクス・ビダル以外にもたくさんの名前が新戦力候補として浮上し始めている。

 一方で、ここにきてチームのパフォーマンスが向上してきたこともあり、はたして本当にバルセロナは1月に補強する必要があるのか、それとも来夏に行う大型補強に向けて資金を蓄えておく方が良いのか、判断が問われ始めてもいる。

 10月31日に行われたヘタフェ戦では、アンドレス・イニエスタが途中出場で復帰を果たした。丸1カ月も戦列を離れていた分、彼はフレッシュな状態でシーズン後半を迎えられることになるだろう。約2カ月の離脱を経て11月中旬以降に復帰する予定のリオネル・メッシについても、恐らく同じことが言える。

 けが人や出場停止が相次いでいるにもかかわらず、ここにきてバルセロナは課題の守備も安定してきた。イバン・ラキティッチやセルヒオ・ブスケツ、セルジ・ロベルトなど、好調を維持している選手も多い。セルジ・ロベルトはダニエウ・アウベスの不在時に代役を務めた右サイドバックでも良いプレーを見せていたが、やはりそこは彼本来のポジションではなく、2列目から攻撃に加わることのできる中盤で起用すべきだとルイス・エンリケ監督は考えるようになっている。

トリデンテ以外、人材が不足しているFW

前線で得点源として計算できるのはメッシ、スアレス(9)、ネイマール(右)のみ。メッシの復帰は11月中旬以降の予定だ 【Getty Images】

 だが、バルセロナ最大の武器である前線については、得点源として計算できるのが3人の先発――メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールが形成する有名なトリデンテ――しかいない。彼らのバックアッパーを務めるムニル・エルハダディとサンドロ・ラミレスは現時点では明らかに力不足の印象があり、まだトップチームでの地位を確立するに至っていない。

 その点、バルセロナは未成年選手の国際移籍違反をめぐって対立したFIFAとの交渉に失敗した代償を高く払うことになったと言える。チェルシーでも十分なプレー時間を得られていないペドロ・ロドリゲスやボージャン・クルキッチ、ジェラール・デウロフェウらを引き止めなかったのも失敗だった。

 このような背景もあり、現時点で噂されている冬の補強の最大の焦点は、かつて所属したヘンリク・ラーションのようなセンターFWに絞られている。だが使い勝手がよく、多数のタイトルを獲得した経験を持ち、チームへの適応も早く、レギュラー陣の定位置を極度に脅かすことなく、ビッグクラブの重圧に臆せず重要なゴールを決めてくれる。そんな人材を見つけるのは簡単なことではない。

 その条件ですぐに浮かび上がってくるのはロビン・ファン・ペルシだ。昨年のワールドカップで活躍を見せ、キャリアのピークを迎えたマンチェスター・ユナイテッドをこの夏に去りフェネルバフチェへと移籍した32歳は、市場価格も1300万ユーロ(約17億2000万円)前後とバルセロナにとっては手頃な選手である。他では苦しいシーズンを過ごしているチェルシーの2選手、ディエゴ・コスタとラダメル・ファルカオを候補に挙げる者もいる。

 センターFWとともに人材が不足しているウイングには、セルタのノリートの復帰を確実視する報道も出ている。今季絶好調の彼はジェラール・ピケやセスク・ファブレガス、ジョルディ・アルバ、そして1月に加わるアレイクス・ビダルらに続く出戻り組のカンテラーノ(下部組織出身者)となるかもしれない。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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