コーチの助言OK!女子だけのルールとは? 杉山愛コラム「愛’s EYE」

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戦術的な面白味が増すルール

女子ツアーでのみ採用されている「オンコート・コーチング」とは? 写真はコーチから助言を受けるアナ・イバノビッチ 【写真:ロイター/アフロ】

 女子のツアー大会では「オンコート・コーチング」を取り入れているのをご存じでしょうか。これは、チェンジエンドやセット間にコーチのアドバイスを受けられるというもの。グランドスラムや男子ツアーでは採用されていませんが、とても面白い試みだと思います。選手は事前にコーチの名前を申請しておき、呼びたいときはチェンジエンド時に主審に申し出て、主審のアナウンスによってコーチがコートに入ります。呼ぶことができるのは一人に限られ、ダブルスでも一人です。

 いつ呼ぶかは基本的に選手の判断ですが、アイコンタクトでコーチが「今、話をしたい」と意思を伝えたり、特に合図をしなくても、あうんの呼吸で呼ばれることも多いはずです。

 導入のときには選手の間でも賛否両論ありました。「テニスは試合が始まったら一切、周囲のアドバイスを受けられないから面白いんだ」という声も少なからずありました。それでも、オンコート・コーチングが試合の流れを変えるターニングポイントになるなど、戦術的な面白味が増すことから、今ではすっかり定着しています。

 エンターテインメント性という面も見逃せません。「ここでコーチはどんなことを言うんだろう」とか、「アドバイスでどう変わるんだろう」というのは観戦者にとって興味深いところです。しかも、試合がテレビなどで放映される場合はコーチがマイクをつけるので、視聴者もやりとりを聞くことができます。これは画期的なルールですね。私は導入に賛成でしたし、実際、このルールをうまく活用していたと思います。

時には言い合いになることも……

 ただ、コーチングが良い方向に働くとは限らず、時々けんかのようになって終わるパターンも見られます。そのまま放送されては差し障りがあるんじゃないかというくらい激しく言い合ったり……。

 自分でも経験がありますが、選手はこう見ているけれど、外から冷静に見ているコーチは全然違う見方をしている、ということはしばしば起こります。お互いの言い分がぶつかって時間が過ぎてしまうこともあり得ます。もちろん、選手もコーチも本気でやっているからこそ起こることです。選手の激しさが浮き彫りになるシーンではありますね。

 もちろん、やることが全部うまくいかなかったり、どうしたらいいのか分からなくなっていた選手が、冷静にアドバイスを聞き入れて、そこから流れがガラッと変わる、ということもあります。そういうのは見ていて面白いですね。

 チェンジエンドのインターバルは90秒。だからこそ、普段からしっかりしたコミュニケーションが取れていないと意志がうまく通いません。「うんうん」と選手が納得しているのを見ると、彼女たちはチームとしてうまくいっているんだろうな、と想像できます。

 プレーがうまくいかない時だからこそコーチが呼ばれるわけで、選手はその客観的な意見にいかに冷静に耳を傾けられるかです。必要としているから呼んだはずなのに、「分かっているわよ」「もう、やっているわよ」と感情的になってしまうと、せっかくのコーチングなのに何も生まれません。選手には精神的な成熟も求められるでしょう。ただ、自分の経験でも、そういう態度になってしまうことが何度かありました。良いときはアドバイスを聞き入れて、それをうまく消化して、次のプレーに生かせるのですが……。

 テレビなどで見ていても「あ、コーチとぶつかっているのかな」というのが見てとれます。コーチには選手が見えていないものも確かに見えることがあるのですが、もがいている選手には、なかなか素直に受け入れることができないのです。選手もロボットではなく一人の人間なので、感情のアップダウンも当然あって、それが弱さとなって、しばしばオンコート・コーチングの場面であらわになるように思います。

タイミングよく使うことが重要

 コーチをいつ呼ぶか、というタイミングも一つの駆け引きです。早めに呼んでうまく流れをつかむこともあれば、コーチのアドバイスで修正したのに、それにまた相手が対応してきて再び流れが変わることもあるでしょう。見ていて「こんなにうまくいかないのだから呼べばいいのに」と思うことも時々ありますね(笑)。

 試合は長いので、良いときばかりではないですし、どうやってもうまくいかない場面、自分が試される場面が必ず出てきます。ときには感情が爆発しそうになることもあるでしょう。そこを、オンコート・コーチングも使いながらどう乗り越えるか、状況を変えられるか――そういうところにも、観戦の面白さがあると思います。


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