陰りが見え始めたSTVVの勢い 小野裕二は焦らず「どう建て直すか」

中田徹

3連敗を喫したSTVV

序盤好調だったSTVVだが、3連敗を喫するなど苦しい時期を迎えている 【Getty Images】

 2部から昇格したばかりのシント・トロイデンVV(STVV)は、7月、8月とベルギーリーグに新風を吹かせていたが、9月上旬、ヤニック・フェレイラ監督がスタンダールに移ってから、苦しい時期を迎えている。17日は下位、メヘレンとの対戦だったが、終わってみれば0−3と大差を付けられての大敗だった。これでSTVVは3連敗である。

 無念さをにじませながら語ったクリス・オルーグリン監督の「前半は中盤を制していたんだが」という言葉には、後半は別のゲームになってしまったことがうかがえる。STVVは4バックと3人のボランチで守備を固め、ヨハン・ボリ、エドミウソン・ジュニオールの2トップとMF小野裕二で攻め込む新布陣を採用したが、後半立ち上がりに大ピンチを招いてから徐々に瓦解し、55分に2点差とされると相手に圧倒されてしまった。

 フル出場した小野は試合直後ということもあり、顔に汗を滴らせながら「今日は、相手の方が単純に強かったと思う。セカンドボールもそう。一対一になったときの対応などでも後手に回っていた部分がある。そこが差になった」と分析した。

小野「浮き沈みが激しいのは予想できていた」

 小野個人としては、まだ両チーム無得点だった9分に、訪れた惜しいチャンスを生かしきれなかった。ロングボールを受けたFWボリからMFロブ・スホーフスとつなぎ、走り込んできた小野に丁寧な落としのパスが入った。これを小野は左足でダイレクトシュートを放ったが、わずかにゴールの枠を外してしまった。60分にはCKから、体を捻りながらダイビングヘッドで狙うなど、確実に相手ペナルティーエリア近辺での危険なプレーが増えている。しかし、今季の小野はまだゴールもアシストもない。

「チームとして相手を押し込み、センターバックの一枚が中盤に上がってセカンドボールを拾って二次攻撃、三次攻撃を仕掛けている時、良い場面が起きていた。僕も相手の間で受けて前を向いて、一人かわして、相手の股を抜いてシュートを狙ったりしたんですけれど、相手の足に当たってしまったりした。ただ、自分の陣地の低い位置でパスを回すとき、どうするか。自分のポジショニングも含めて、そこが課題」(小野)

 連敗をストップできず、チームとしては辛抱する時期を迎えているが、「あまりネガティブになり過ぎてはいけない」と小野は言う。

「今日は代表ウィークもあって2週間空いていたから、本当に再スタートだった。連敗していたので、違う流れにしたかったけれどできなかった。(横浜F・) マリノスの時は10試合勝てなかった時があった。スタンダールの時もずっと勝てない時期があった。こういう時期は強いチームでもあり得ること。これがサッカーだと思うから、それをどう建て直すか。去年、スタンダールで勝てなかった時期があったけれど、それでもしっかりプレーオフ1に入った。自分が経験したことを、みんなに伝えていければいいと思う。リーグは本当に長いから、終わった時にしっかり自分たちはやり切ったんだと言えるように、やっていければいい。本当に若いチームだし、浮き沈みが激しいのは予想できていたこと。だから、この状況を早く打開できるようにしていきたい」

STVVのGKコーチが川島と練習

小野(左)と川島は共にスタンダールに在籍していた 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 スタンダール時代、一緒にプレーしたGK川島永嗣が「シント・トロイデンの練習に参加。加入も視野に」という記事が日本メディアに載ったが、 小野はチーム練習で川島を見ていないという。

「僕は何も聞いていない。永嗣さんからも何も聞いていません。チームにも来ていません。どこからこういう情報が出たのか知りませんけれど、永嗣さんにはお世話になっていますし、尊敬する先輩なので早く永嗣さんがプレーして、代表チームでプレーするところを見たい。また、一緒にプレーしたいから、自分はそこに向かってやるだけだし、(川島にとって)良いニュースが来てほしい。(GKは)難しいポジションだけど、それは本人が一番分かっている。あの人のメンタルとか、考えはしっかりしている。次を見据えて、やっていると思うから。(川島がSTVVに)来たら来たで学ぶことはあると思うし、とにかく今は永嗣さんがどうこうとかじゃなく、チームのことだけを考えてやっていければいいと思います」

 今回、川島の記事が出たきっかけは、15日に川島とSTVVのGKコーチ、パトリック・ナイスが合同練習を行ったことだった。ナイスは、アントワープ州2部リーグのメルクスプラスというクラブの、ユース育成技術責任者という役職を持っている。リールセ時代に川島と2年間、仕事をした縁もあり、個人練習に付き添うことになったのだ。

 これまで川島は、ベルギーでも屈指のフィジオセラピスト、リーフェン・マーススハルクのもとでコンディションを整えていたという。今後は冬の移籍市場を見据えて、川島とナイスは週2回のペースで個人練習を続けていく意向を持っているらしい。

 ナイスはSTVVのピッチを、川島との練習のために使うことができるよう、クラブの会長に掛け合う予定だという。

「その方が、川島にとって家から通うのが近くなるんだ」(ナイス)

 今後、STVVとの関係がどのように発展していくか分からないが、今はまだ、川島とナイスは個人的なトレーニングパートナーという関係のようだ。
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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