W杯3勝、五郎丸の涙に見た重圧の大きさ 元日本代表・藤井淳が解説
「こんなに緻密に…」と驚いたエディーの指導
緻密なコーチングで日本代表を強くしたエディー・ジョーンズHC 【Photo by Yuka SHIGA】
W杯前の試合では「手の内は見せない」と言っていて、確かに結果は出ませんでした。選手は不安になってもおかしくなかったんですが、エディーの過去のW杯での経験(オーストラリア代表HCで準優勝、南アフリカ代表アドバイザーで優勝)があるので、納得できたんだと思います。
エディーは最初から一人だけ、この結果を予想していたんじゃないかと感じます。W杯で勝ち、もっとも印象的なチームになるという大きなゴールを決めて、そこから逆算していました。
僕はエディージャパンに3年前にいただけで短いんですが、「こんなに緻密に考えてコーチングをする人がいるのか……」と思っていました。オーストラリア代表HCと、南アフリカ代表アドバイザー、そして日本代表HCとしてW杯通算16勝2敗という成績を見ても、エディーが世界トップの監督であることがわかると思います。
――元チームメイトとして今の日本代表をどう見ていますか?
体を張り続けた選手はもちろん、支えてくれたスタッフの方々にも感謝しています。エディーの要求は本当に厳しいので、スタッフがあのスケジュールを実現させて、選手があの練習を続けたことを尊敬します。
SO廣瀬俊朗、HO湯原祐希(ともに東芝)は出場機会がありませんでしたが、このエディージャパンの31人に選ばれた時点で勝者だと思います。
力強い後押しになった「ニッポンコール」
先制トライを奪ったWTB松島。攻守に活躍した 【Photo by Yuka SHIGA】
選手たちはうれしかったと思います。W杯、しかもイングランドという異国の地であれだけ応援していただけたので。これまでは「弱い日本を応援してくれる」というイメージだったんですが、今回は日本の勝利、日本の良いラグビーを期待する声だったので、選手にとっては力強い後押しになったと思います。
――4年後には日本でW杯が行われます。
今大会で多くの方々にラグビーを知ってもらえたと思います。決勝トーナメントに行けなかったのは残念ですが、間違いなく次回大会につながるはずです。
今回のエディージャパンが生み出した熱を冷めさせないように、ラグビー界全体で考えていかなくてはいけないと思います。
退任するエディーHCに心からの感謝
エディージャパンがもたらした熱を4年後の日本大会へ 【Photo by Yuka SHIGA】
そうですね……、僕もここでは言えないです(笑)。
ただ、本当に要求が高くて、厳しい指摘も多いですけど、最後に結果を残せたのはエディーのおかげなので、みんな心から感謝していると思います。
僕は代表にいた期間は短かったですが、携われたこと、今大会の戦いを見せてくれたことに感謝しています。4年間を計画的に進めて、選手の感情を見ながら、自身はメディアを使ってラグビーを広めたり、情報戦を仕掛けたり……。本当にすごいコーチだと思います。
(取材・文:安実剛士/スポーツナビ)
藤井淳/JunFujii
東芝ブレイブルーパスで活躍する藤井淳。12年にはエディー・ジョーンズHCにより日本代表に選ばれ、6キャップを獲得した 【写真:アフロスポーツ】
西陵商高時代に全国大会に出場、明治大では抜群のスピードを生かして活躍した。東芝ブレイブルーパスでは強気のリードでFWをまとめ、ディフェンス面も向上。2012年にはエディー・ジョーンズHCにより日本代表に選ばれ、6キャップを獲得した。