W杯3勝、五郎丸の涙に見た重圧の大きさ 元日本代表・藤井淳が解説
「エディージャパン」を徹底できた3勝目
3勝目を挙げ、晴れやかな表情を見せる日本代表 【Photo by Yuka SHIGA】
今日だけではなく、南アフリカ戦からの4試合はディフェンスが良かったです。アメリカは個々の強さがあり、コンタクトが好きなチームですが、低いタックルに対して明確な打開策を見つけられずにミスが出たり、蹴ってしまうケースが目立ちました。また、ハンドリングミスが多かったことは日本のディフェンスの出足が早いことも影響していました。
今日は勝っても負けても予選リーグ3位は変わらず、ケガ人も多かったので精神的にも肉体的にも難しい試合でしたが、エディージャパンのやるべきことを徹底してやり切ったのが、このチームの強さだと思います。
――攻撃面ではいかがでしょうか?
日本代表は細かくシェイプ(連続攻撃で同じ方向に複数の選手が走り込む)を重ねて前に出て、ボールを生かす動きも正確だったので、早くボールを奪い返したいアメリカは少しずつ規律が乱れていきました。
そうした状況でSH田中史朗(パナソニック)が急に逆方向にボールを持ち出すと、戻り切れていない相手選手がオフサイドの反則となっていたので、そのあたりもうまく使っていたと思います。
素晴らしかったトンプソンの献身的な働き
W杯初出場でトライを奪ったWTB藤田 【Photo by Yuka SHIGA】
4試合ずっと、LOのトンプソン ルーク(近鉄)は素晴らしかったです。タックル、ボールキャリーと献身的に体を張り続けました。34歳で、W杯も3度目になりますが、今が一番良いんじゃないかと思うぐらい良かったです。彼のプレーを見ていると本当に頭が下がる思いです。
FBの五郎丸歩(ヤマハ発動機)は試合後に涙を見せていましたが、気持ちとしてギリギリの戦いだったんだと感じました。初戦の南アフリカ戦に勝ったことで注目度が高まって、期待値が上がって……。ただでさえ重圧がかかるキッカーの五郎丸にとっては厳しい状況だったはずです。それでも、副将としてチームをまとめ、今日も「マン・オブ・ザ・マッチ」に選ばれて結果を残したのは素晴らしいと思います。
――初出場のWTB藤田慶和(早稲田大)選手はトライを奪う活躍を見せました。
エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)は藤田をスタメンに選んだ理由を「直感」と言っていたようですが、確かな自信があってチョイスしたんだと思います。
藤田もこの4年間をジャパンのために一生懸命やってきた選手で、自分がいずれ中心選手になるんだという自覚もあります。初出場でも伸び伸びとプレーしていて、彼の前向きなところがトライにつながったと思います。「持っている」選手ですね。