28人に求められる攻守の役割 プレミア12侍ジャパンを予想!

ベースボール・タイムズ

スモール・ベースボールに必要な野手

【ベースボール・タイムズ】

 続いて打線。実力伯仲の中、初めて対戦する投手からは、そう簡単に点を奪うことはできない。それでもWBCを2度制覇できたのは、パワーに頼ることなく、日本人特有の細かな技術とスピード、そしてチームバッティングが威力を発揮したからだ。いわゆる「スモール・ベースボール」に適したメンバーを、今回も優先的に選ぶべきだろう。

 06年WBCでは、1番・イチローから西岡剛、福留孝介と並べ、9番には川崎宗則を配置。一発よりも「スピード&つなぎ」を前面に押し出した打線で頂点に立った。09年WBCは、イチロー、中島裕之、青木宣親と出塁率の高い3人を上位に並べ、一発はあったが、それ以上に自己犠牲のできる打線だった。その流れは今回も引き継がれるはずだ。

 そして、1点をもぎ取るためには、同タイプの打者ばかりを並べるのではなく、右打ち左打ちを考慮しながら多様性に富んだ打線を組むべき。また、短期決戦においては“切り札”の存在も重要。06年WBCの準決勝・韓国戦では代打・福留が試合の均衡を破る一発を放ち、09年WBCの決勝・韓国戦では途中から出場した稲葉が貴重な働きを見せた。勝負強い切り札がベンチにいれば必ず役に立つ。さらに、僅差のゲームを勝ち切るために代走要員も確保しておきたいところだ。

経験値の黒田、若さに期待の武田

 以上の観点から、小久保ジャパンの28人はどう選ぶべきか。残念なのは、9月10日発表された一次登録45人の中で、岸孝之が肉離れ、高橋朋己、西野勇士がともに骨折したこと。そうなると、投手陣はかなり絞られる。

 先発陣では、大谷翔平、前田健太、菅野智之、藤浪晋太郎の4人は確定。唯一の左腕として大野雄大もメンバー入りが確実だろう。残りを黒田博樹、武田翔太、則本昂大、小川泰弘、牧田和久、金子千尋、西勇輝で争うが、メジャーでの経験値が高い黒田と、今後も見据えて22歳と若い武田のメンバー入りを推したい。

 リリーフ陣でも左腕・松井裕樹は当確。さらに前述の故障者により、増井浩俊、澤村拓一、山崎康晃、森唯斗と残りのリリーフ陣は全員選んでおくべき。そして、力強いストレートと物怖じしない精神力で2年連続の最多奪三振のタイトル獲得が濃厚な則本のリリーフコンバート案を推奨したい。

小久保イズムをいかに浸透させるか

【ベースボール・タイムズ】

 攻撃の切り札として、右の松田宣浩、左の糸井嘉男、守備要員として菊池涼介がベンチで準備。代走要員として中島卓也の選出を推したい。そして嶋の控えとなる捕手には、炭谷銀仁朗、會澤翼、伊藤光、森友哉の争いとなるが、森友を“第3捕手&代打”で選べば作戦の幅が広がるはずだ。

 注目は“大砲”中村剛也の扱いだったが、一部報道では背中痛のために参加を辞退することが濃厚となった。そもそも小久保監督は、13年秋の台湾遠征から、昨年秋の日米野球、今年春の欧州代表戦と「4番・中田」のチーム作りを続けてきた。そこには、17年WBCでの“王座奪還”の大目標があったからだ。小久保ジャパンの継続性を重視するならば、「4番・中田」の信念は貫くべきだろう。

 日本にとっては自らのプライドを取り戻す大会になる。オールスターゲームであればファン投票で選ぶべきだが、日の丸を背負った真剣勝負である「プレミア12」を勝ち抜くためには、さまざまな状況を想定したメンバー構成が必要になる。そして“小久保イズム”をいかにチーム全体に浸透させるか。まずはメンバー発表を楽しみに待とう。

侍ジャパン28人の予想メンバー

【先発候補】
大谷翔平(日本ハム)、藤浪晋太郎(阪神)、菅野智之(巨人)、前田健太、黒田博樹(ともに広島)、大野雄大(中日)、武田翔太(ソフトバンク)

【リリーフ候補】
松井裕樹、則本昂大(ともに楽天)、澤村拓一(巨人)、山崎康晃(DeNA)、森唯斗(ソフトバンク)、増井浩俊(日本ハム)

【スタメン】
1番セカンド・山田哲人(ヤクルト)、2番センター・秋山翔吾(西武)、3番ライト・柳田悠岐(ソフトバンク)、4番ファースト・中田翔(日本ハム)、5番レフト・筒香嘉智(DeNA)、6番指名打者・内川聖一(ソフトバンク)、7番ショート・坂本勇人(巨人)、8番キャッチャー・嶋基宏(楽天)、9番サード・川端慎吾(ヤクルト)

【控え】
◯代打
松田宣浩(ソフトバンク)、糸井嘉男(オリックス)

◯内野
菊池涼介(広島)

◯代走
中島卓也(日本ハム)

◯捕手
炭谷銀仁朗(西武)

◯捕手&代打
森友哉(西武)

(文:三和直樹、グラフィックデザイン:山崎理美)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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