“BHB”備える田中将大に運命を託す 不安な復帰戦はプロローグにすぎない

杉浦大介

6日後、NY中の視線が背番号19に注がれる

田中は6日後のワイルドカードでの登板が有力。大一番で首脳陣、ファンの期待に応えることができるか 【Getty Images】

 今月上旬に戦線離脱した際には不安がよぎったが、大事な時期に向けて肩肘を休ませられたことをポジティブにも考えられる。復帰戦で予定通り100球近くを投げ、来週には万全に近い状態でマウンドに立てるはずだ。

 対戦相手はレンジャーズ、エンゼルス、あるいはツインズか。いずれにしても、言うまでもないことだが、10月6日のゲームはヤンキースにとって、田中個人にとっても、計りしれないほど重要な意味を持つ一戦である。

「こんなときのためにヤンキースは大金を払って田中を獲得したんだ。ケガに悩まされてきたが、良い球を投げている。9月に入ってマウンドに立てば良い投球をしてきたことが示す通り、舞台に応じて投球の質を上げられる。1試合だから何でも起こり得るが、彼なら誰が相手でも力を出せるはずだ」

 元メジャーリーガーで、現在はESPNでアナリストを務めるダグ・グランビルのそんな言葉も胸に響いてくる。

 勝てば田中にとってキャリアのハイライトの1つとなり、その勇姿はニューヨークで永く記憶されていくことになる。そのときには、少なくとも2年目の現時点では、7年1億5500万ドル(約161億円)という莫大な契約も正当化されるはずだ。しかし、逆に全米が注目する一戦で無残に痛打されるようなことがあれば……。

「(ワイルドカード戦での先発は)まだ仮定の話ですけど、そういう可能性もあるということ。そこに向けて、心の部分も、身体の部分も、しっかりした準備をしていくことだけです」

 そう語り残した田中にとって、このレッドソックス戦は真のビッグゲームへのプロローグにすぎない。間もなく行われるワイルドカード獲得決定後のシャンパンファイトも、予定調和のセレモニーでしかない。

 メジャー2年目のクライマックスに向けて、カウントダウンは始まった。ニューヨーク中の視線が背番号19に注がれるまで、あと6日である。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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