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オランダで再スタートを切ったハーフナー
特徴の生きる環境で復活を遂げる

オランダでは動向が常に注目されていた

スペイン、フィンランドを経てオランダリーグに復帰したハーフナー
スペイン、フィンランドを経てオランダリーグに復帰したハーフナー【VI-Images via Getty Images】

 今から1年前、スペインリーグ・コルドバの一員としてサンチャゴ・ベルナベウ(レアル・マドリーのホーム)のピッチの上に立ち、セルヒオ・ラモスとせめぎ合ったハーフナー・マイクの姿を、テレビ画像を通じて見ながら興奮したのも大昔の話になってしまった。その後、彼は肝心のゴールを決められず、やがてベンチにすら入らなくなり、北欧フィンランドのヘルシンキへと活躍の場を移した。フィンランドのチームは『チャンピオンズリーグ(CL)優勝チーム予選プレーオフ』に回るから、一度CLにチャレンジするには面白い選択だったかもしれない。


 ところが、あまりフィンランドからハーフナーが華々しく活躍したという報道はオランダに届かなかった。それでも興味深かったのは、オランダのメディアが夏の移籍市場の注目株として彼のことを扱っていたことだった。『エルフ』という月刊誌メディアは6月15日の電子版でこう報じている。


「オランダリーグの3クラブ、ヘーレンフェーン、ADOデンハーグ、フェイエノールトが“マイク・ハーフナー”の獲得を狙っている。ヘルシンキに移籍してからハーフナーはフィンランドリーグで12試合出場し3ゴールを決めている。夢のリーグだったスペインだったが、コルドバを4カ月で退団した。かねてからフェイエノールトはハーフナーを欲しがっていたが、当時の所属チーム、フィテッセとの交渉は成立しなかった。ハーフナーはフィテッセで79試合出場し、26ゴール決めている」


 火のないところに煙は立たぬ。しかし、中には精度の低い情報も混じっている。ヴァンフォーレ甲府時代のハーフナーには、「フィテッセとAZがハーフナー獲得に乗り出した」という報道もあった。僕はAZの試合を観戦した際にアーネスト・スチュワートTDにこれを問いただしてみた。


「私は親父さん(ディト・ハーフナー)のことはよく知ってるが、息子のことはよく知らない。AZが“マイク・ハーフナー”を追ってる事実はない」


 それでも、フィテッセのテッド・ファン・レーウウェンが日本まで飛んで熱心にハーフナーをチェックしていたのは事実だった。


 ADOデンハーグの情報に強い『エルフ』というメディアの性質上、この夏の移籍市場で外交の街デンハーグのクラブがハーフナーに興味を持っているのは間違いなかった。その後、ヘンク・フレーザー監督は「ハーフナーが欲しい。私は彼が何をできるか、十分に分かっている」とメディアを通じてラブコールを送り続けることになった。また、プレシーズンの試合現場では「フィテッセもハーフナーを狙っているらしい」といううわさが流れていた。記事にはならなかったものの、それは後に事実と判明している。スペインリーグではノーゴール、フィンランドリーグでは5ゴールと、1年間鳴りを潜めていたハーフナーだが、フィテッセ時代に2季連続2桁ゴールを記録した彼の履歴書は、オランダリーグのクラブにとって魅力的だったのだ。

良質なサイドアタッカーに恵まれた環境

良質なサイドアタッカーを擁するADOデンハーグはハーフナーの特徴を生かす環境が整っている
良質なサイドアタッカーを擁するADOデンハーグはハーフナーの特徴を生かす環境が整っている【VI-Images via Getty Images】

 オランダの報道でずっと気になることがあった。それはハーフナーの移籍先として、フェイエノールトの名前が挙がってくることだった。とりわけ彼らがグラツィアーノ・ペッレ(現サウサンプトン)の後継者探しをしている時、ハーフナーの名前が頻繁に載っていた。屈指の名門チームのストライカーとして、レヒユン(フェイエノールトサポーターの愛称)を満足させるだけの器がハーフナーにあるのだろうか? その問いを、全国紙のフェイエノールト番記者に投げたことがある。彼は答えた。


「マイクはフィテッセより、フェイエノールトの方が絶対にフィットする。マイクは両サイドのウイングが良くて初めて活躍するストライカー。フィテッセとフェイエノールトのウインガーを比べてみろ。彼はむしろ、フェイエノールトでプレーした方が生きるタイプなんだ」


 しかも1年前のフェイエノールトの監督は、フィテッセ時代に個人プロジェクトを作って鍛えてくれた恩師フレッド・ルッテンだった。だが、昨季のフェイエノールトはウイングが機能しなかった。相手ペナルティーエリアの狭いスペースを打開するだけのテクニックに劣るハーフナーにとって、フェイエノールトの移籍話に飛びつかなかったのは正解だったかもしれない。


 それにしてもフェイエノールトの番記者は、ハーフナーの特質をよく突いていた。今、ハーフナー(28)はルベン・スハーケン(33)、エドゥアルド・ドゥプラン(32)という良質のサイドアタッカーに恵まれ、ADOデンハーグの主力として活躍している。ハーフナーにとってオランダ再デビュー戦となった第2節のトゥエンテ戦で、彼は左からのクロスをニアで合わせて今季初ゴール。さらにスハーケン、ドゥプランも躍動した。全国紙『アルへメーン・ダッハブラット』は『老獪な三銃士』なるコピーを作り、この3トップをそろってベストイレブンに選出した。また、専門誌『フットボール・インターナショナル』もハーフナーをベストイレブンに選んだ。


 もう一人、ADOデンハーグにはハーフナーに良質なクロスを送る選手がいる。それは左サイドバックのアーロン・マイヤースだ。第3節、ユトレヒト相手に0−1のビハインドで迎えた89分、マイヤースは(クロスというより)放り込みのボールをハーフナーめがけて蹴った。194センチの長身を生かしてハーフナーは空中戦に競り勝ったが、ゴールまでの距離がちょっとあった。しかし、ヘディングシュートは緩やかな弧を描き、GKロビン・ルイターの頭上を越してゴールへ吸い込まれていった。ハーフナーに全幅の信頼を寄せる指揮官は記者会見場でうなった。「最後に典型的な“ハーフナー・ゴール”が決まった」と。

中田徹
中田徹

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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